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二階堂先生の「食べ物は薬」
オオムギ - 水溶性食物繊維やビタミンB1豊富で脚気の食事療法に
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- オオムギ
- 学名:Hordeum vulgare.
- 科名:イネ科
- 英名:barley
- 別名:大麦(だいばく)、フトムギ、六条オオムギ
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中近東に野生するHordeum spontaneum を起源種とすると考えられており、野生二条オオムギから栽培種が生じ、その後突然変異により六条種ができ、それが世界各地へ広がっていったことが遺伝子情報解析により明らかにされています。
茎は日本で見られる品種では約70cm~1mで、葉は長披針形で白っぽく粉をふいたような青白色をしており、葉鞘が基部で茎を抱いて互生しています。茎の先に4~8cmの穂状花序が出て、軸の節の部分に小穂が密生します。小穂は無柄で軸の片側に3個づつ集まって束生し、両側で小穂が6列に並んで見えることから、一般のオオムギ品種を六条オオムギと呼んでいます。各小穂の外側には苞葉の一種である頴(えい)があり、先端は針状の芒(のぎ)になっています。
果実には果皮が薄く種子に密着して離れにくい皮麦(かわむぎ)と、容易に脱落する裸麦(はだかむぎ)とがあります。日本で見られるオオムギは耐寒性が少なく、早熟性の六条オオムギで皮麦と裸麦の両品種があります。
近縁のヤバネオオムギ Hordeum vulgare (H. distichum)は別名ビールムギと呼ばれる別系統のオオムギで、小穂の一部が退化して芒もなく、果実を付ける小穂が2列に並ぶので二条オオムギと呼ばれます。小穂の芒も長くなり、果実も六条オオムギより少し大きくなります。
果実を精白したものが丸麦で、味噌麹の原料としたり、炒って麦こがしとして食用や菓子原料に使います。硬くて消化しにくいため熱水蒸気で軟らかくし、ローラーで扁平にして押し麦とし、米と一緒に炊いて麦飯として食用にします。ビタミンB1が0.35mg/100gと多いので脚気の食事療法に用いられます。
オオムギはコムギに比べて水溶性の食物繊維が豊富で、灰分、ミネラル、ビタミンなどが多いことから血中コレステロールや血糖値などの上昇抑制作用、BMI値低減効果が報告されています。また皮麦を焙じて麦茶として飲料に用いられています。
オオムギを発芽させたものがオオムギ麦芽ですが、他の麦類を発芽させたものに比べて酵素含量が多く、良質のため一般に「麦芽」と言えばオオムギ麦芽を指します。オオムギ麦芽にはデンプンを分解する酵素のアミラーゼが多く含まれており、その糖化力と液化力とによりアルコールやビール製造に用いられたり、水飴製造原料とされます。ただし、ビール製造用としては発芽歩合がよく、タンパク含量が少なく、デンプン含量の多いなどの条件からほとんどが二条オオムギの麦芽が用いられます。ビールの他にウイスキーや焼酎などの酒類もオオムギを原料として作られています。
漢方でも麦芽を半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)に配合して、消化不良の改善、肝の緊張を解く目的で用いられます。また乳房が張って痛む時、食べ過ぎの消化不良などに乾燥麦芽を用います。
オオムギの茎は乾燥すると黄金色となり光沢が美しいことから麦藁帽子、籠や敷物などに加工したり飲料用のストローとして用いられます。また最近では若葉を粉砕して青汁の一種として市販されているものもあります。