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二階堂先生の「食べ物は薬」
アマ - オメガ3脂肪酸に富む油と高級織物に使われる繊維
- アマ
- 学名:Linum usitatissimum .
- 科名:アマ科
- 英名:flax, lineseed
- 別名:ヌメリゴマ、ヌメゴマ、亜麻、アカゴマ、一年亜麻
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中央アジア南部、アラビア原産の1年草で、野生は知られていません。ただ同属のマツバニンジン Linum stelleroides 1種だけは日本に野生しています。栽培の歴史は古くエジプトやペルシャなどの遺跡からアマの織物が見つけられており、現在では世界各地で広く繊維と油を取る目的で栽培されています。多くの変種があり、採油用の品種は南方地域、繊維用の品種は北方での栽培に適しています。日本では江戸時代(1690年頃)に製薬用の油を取るために栽培され、明治に入ってからは繊維用として北海道で開拓使によって栽培が成功しました。
全草無毛で、茎は1m内外で細長く、上部で枝分かれします。葉は披針形で全縁、長さ2~3cm、無柄で互生しています。
初夏に枝の先に開花し、径約1.5cmの小さな可愛らしい5弁の青い花を日の出とともに日光に向かって咲き、昼前には散ってしまうとても儚い花です。
果実は球形をしており、10個の平たくて褐色の楕円形をした光沢のある小さな種子(亜麻仁)が入っています。種を水に入れると表面が粘液で覆われてヌルヌルするところからヌメリゴマ(ヌメゴマ)の別名が知られています。これは種皮中に含まれる粘液によるものです。
亜麻仁を常圧で圧搾して得られる亜麻仁油は黄色透明の乾性油で不快臭はありませんが、空気に晒しておくと段々に色が濃くなり、臭くなってきます。食用する際に加熱調理(炒め物や揚げ物など)では酸化しやすいため適していませんが、そのまま飲んだり、飲み物や味噌汁に入れたり、いろいろの料理にかけたりして用いられます。
亜麻仁油にはオメガ3脂肪酸の一種であるα-リノレン酸をはじめとする不飽和脂肪酸を多く含み、さらにポリフェノールのリグナンなどの成分も知られており栄養サプリメントして利用されています。皮膚擦剤や軟膏などの薬用原料として用いられるほか、ペンキ、顔料、油絵具、リノリュームや油紙等の製造、木製品の仕上げなどに用いられています。さらにシックハウス症候群対策の塗料の溶剤としてVOCを放出しないので使われています。
中国では根を亜麻と呼び慢性肝炎、頭痛などに煎じて服用したり、潰して打撲傷に外用します。種子は亜麻子と呼び、煎じて解熱鎮痛薬としたり、潰して抜け毛や皮膚のかゆみに外用します。
種子を採取後の茎を水に漬けて発酵させ、腐らせてから不要部分を除いてから茎を機械で砕き繊維部分を分離させます。得られた靭皮繊維は柔らかく、綿よりも長く絹のような光沢があるので昔から高級織物にリンネル(リンネ)として用いられています。通気性、吸湿性も優れており肌触りが良いので高級な衣類などに用いられています。
古来亜麻の糸はライン(line)と呼ばれ丈夫で細いことから「線、筋」を表す英語に、またフランス語ではランと発音され女性の高級下着ランジェリーの由来ともされています。聖書にもイエスの遺体が包まれた亜麻布としても記載が見られます。