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二階堂先生の「食べ物は薬」
クリ - 高カロリー、食べ過ぎに注意
- クリ
- 学名:Custanea crenata
- 科名:ブナ科
- 英名:chestnut
- 別名:栗、シバグリ(柴栗)、ヤマグリ(山栗)
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日本及び朝鮮半島南部の原産で、日本各地の山野に見られる落葉性高木です。シバグリ又はヤマグリと呼ばれるものを原種として多くの栽培品種が作られています。日本ではイネより以前に、縄文時代人の主食とされ、栽培もされていたと言われます。かつては救荒食物として長い間活用されてきました。現在ではクリの栽培産地は全国に広がっていますが、生産量は茨城県が多く、特に笠間が有名で生産量日本一と言われています。
幹の直径は太く、80cm以上にもなります。その樹皮は灰色で厚く、縦に深い裂け目が見られます。葉は互生し、ぱりぱりとした薄いもので、表面には艶があり、葉の縁は突起した小さな鋸歯が見られます。
雌雄異花で、5月頃に開花します。雄花は黄白色で細長い尾状花序をなし、長さが10-15cmで直立します。芳香成分にスペルミンが含まれているため、ヒトの精液に似た臭いがします。香りが強いため、よく昆虫が集まり、風媒花が多いブナ科植物としては珍しい虫媒花とされます。一方、雌花は緑色で基部近くに固まって付きます。3個の子房を含んでおり、受精した子房だけが肥大して果実となります。
熟すまでは鋭い棘が密生した毬(いが)が付いていて、熟すと毬がはじけて硬い茶色の鬼皮に包まれた果実が顔を出します。この鬼皮の内側には渋味(タンニン)のある種皮にあたる渋皮に覆われた種子が入っています。渋皮を除いた種子は茹で栗、焼き栗、きんとん、栗飯、マロングラッセ、栗饅頭、栗羊羹、干し栗などにして食べます。中国原産のチュウゴククリには熱を加えると渋皮が簡単に剥ける性質があるので、焼き栗などに使われています。最近、ニホングリでも渋皮が取れやすい品種「ぽろたん」が開発されました(茨城県果樹研究所)。渋皮の方はタコ、イカなどにあたった時にそのままかみ砕いて用いると言われます。栄養成分としてカリウム、葉酸、ビタミン類や食物繊維が知られ、高血圧、貧血や風邪の予防、便秘改善、疲労回復、老化防止などに良いとされます。ただし栄養価が高く、高カロリーなので食べ過ぎには注意が必要です。
真夏に取った葉を乾燥したものを栗葉(りつよう)といい、煎じて湿疹、かぶれや火傷に外用したり、浴湯料として利用されます。またタンニンを多く含むため、媒染剤とされます。生の葉を煎じた汁をウルシかぶれを治す洗浄剤とする民間薬的な使用法も知られています。
秋に樹皮と毬を採取します。樹皮には多量のタンニンが含有されているため皮なめしや染め物の媒染剤として使われます。
毬は栗毛毬(りつもうきゅう)と呼び、葉と同様に煎じて外用として用います。また黒焼きにしたものは脱毛防止作用があると言われています。
材は堅く、湿気に強く腐食しにくいため、橋や船の材料、建築材、枕木、門松などに使われます。また昔はカスタネットを作るのに用いられました。カスタネットの形がクリの果実を2つに割った形になっています。