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二階堂先生の「食べ物は薬」
サフラン - 最も高価なスパイス
- サフラン
- 学名:Crocus sativus
- 科名:アヤメ科
- 英名:saffron、saffron crocus
- 別名:番紅花(ばんこうか)、薬用サフラン
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南ヨーロッパ原産でスペインや日本などで栽培されている多年生宿根草で、日当たりの良い肥沃土壌でよく育ちます。開花の頃、狭線状をした若葉を叢生し、花が咲き終わる頃に急伸して30cm以上になります。灰緑色の葉の主脈は白色のはっきりとしたもので、基部は葉鞘に包まれています。
秋に地下の球茎から伸びた花茎に芳香のある美しい淡紫色で、紫色の線が多数見られるロート状の花が咲きます。若葉の伸長と共に開花すると、3つに分枝した濃紅色の雌しべが垂れ下がり目立ってきます。長さ約3cm、ラッパ状をした鮮紅色の柱頭部分だけを開花期の朝に採取し、陰干しまたは低温火力乾燥したものが生薬のサフランです。
サフランは鎮静、鎮痙、婦人病薬(月経困難、無月経症、更年期障害、流産癖)に主として用いられます。また止血剤として子宮出血、月経過多、鼻出血などにも用いられます。民間的には風邪薬として温浸液を用いることもあります。
成分としてはカロチノイド色素のクロシン、苦味配糖体のピクロクロシン、精油成分のサフラナールなどが含有されています。クロシンはクチナシ果実にも含有されている水溶性の黄色色素です。長く保存したり、湿気を吸ったりするとピクロクロシンが加水分解されてサフラナールに変化しますので保存は遮光した密閉容器を用いることが必要です。
日本へは江戸時代に薬として渡来したとされ、その後栽培されるようになり大分県竹田市が主産地として有名です。ただ国内で消費されるサフランはほとんどスペインから輸入されていると言われています。1グラムのサフランを得るのに100個以上の球根が必要とされるので最も高価なスパイスとも言われ、ヨーロッパでは金と同様な取引をされていたと言われます。
苦味と強い香りがある乾燥した柱頭はピラフやスープなどの着色料として使ったり、パエリヤやブイヤベースに着香料として使われますが、いずれもごく少量(0.5~1g/1人分)しか使いません。また地方によってはご飯やお酒の着色に用いています。
同属のハルサフラン(Crocus vernus)は春に紫色の花が咲き、雌しべはサフランに比べ、ずっと短く、色も淡いので薬用とはされません。また花の色が多彩な園芸品種も多数作られていますがこれらはクロッカスと呼ばれ観賞用に栽培されています。
古代染料の一つで黄色は高貴な色とされ、乾燥した柱頭部分を用いて鮮やかな黄色に染まります。古代ギリシアでは王族のロイヤルカラーとされた時代もあり、衣類や頭髪の着色に利用されていました。
通経作用が強いので妊娠中は避ける方がよく、また1日量として3グラムが限度と言われています。それ以上では重篤な副作用や場合によっては死にいたることもあります。