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二階堂先生の「食べ物は薬」
スギナ- ミネラル豊富な食用野菜
- スギナ
- 学名:Equisetum arvense
- 科名:トクサ科
- 英名:horse tail, field hair-tail
- 別名:杉菜、筆頭菜、土筆、地獄草
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多年生のシダ植物で北半球の温帯に広くみられる食用野草の1つです。早春に地下茎から芽を出し、ツクシ(土筆)と呼ばれる10-15cm位の丈の胞子茎を出します。円柱状で柔らかく、淡い茶色の茎で節の部分に袴と呼ばれる退化した輪状の葉が茎を取り巻いています。土筆の胞子穂からは緑色の胞子を多量に出します。顕微鏡でこの胞子を観察すると球形で2本の弾糸と呼ばれる紐状のものを四方に伸ばしているのがわかります。乾湿によりこの弾糸の動きがおこり、それによって胞子の散布がなされます。胞子を散布するとすぐに土筆は枯れてしまい、夏頃になると土筆とは全く外形が違う地上茎(栄養茎)が伸びてきます。直立し、20-40cmの丈で主軸の節から多くの鮮緑色の枝を輪状に出し、節には退化した小形鞘状の葉を輪生させます。これらの葉の付き方がスギ(杉)の樹形に似ていることから杉菜と言われるとの説が知られています。湿った土地を好み、根茎は地下浅くを長く横走して分枝し繁茂するので畑地などでは防除しにくい雑草とされています。
このように同じ根茎から出るツクシが胞子を作って繁殖する胞子茎で、スギナは葉の役目で光合成を行って栄養分を蓄える栄養茎と言えます。
胞子が出る前の若い茎(ツクシ)の袴(鞘状葉)をはずして、灰汁抜きを行ってから煮物、汁の実、和え物、浸し物、漬物、炒め物、酢の物、卵とじやツクシ飯など日本料理の椀種にします。保存は塩漬けにします。栄養茎のスギナも若いものを米のとぎ汁で茹でて汁の実にして江戸時代に食べており、若い根も天日乾燥して栄養茎と同様にして食べられます。
明治天皇はツクシ料理を好まれたと言われています。
栄養茎の全草を乾燥したものを生薬「問荊(もんけい)」と呼び、民間で1日に2-4gを煎じて利尿薬としています。また乾燥後に小さく刻み、炒ってからお茶として飲んだり、スギナ酒にしたり、水で煮だした液を入浴料として湿疹やかゆみなどにも有効で、よく温まるお風呂になると言われています。スギナは古くからヨーロッパでも民間薬的に用いられており、熱を下げたり、病気の予防をするとされています。江戸時代にオランダやポルトガルとの交易に際してこれらの用い方が伝わったものと言われています。スギナはミネラルのカリウム、リン、カルシウム、マグネシウムなどが豊富で、特に多量のケイ素を含有しています。ミネラルの豊富な野菜として知られているホウレンソウの数倍の含量と言われています。その他に脂肪、フラボノイド、アミノ酸、ビタミンCやサポニンのequisetonin,アルカロイドのequisetineなどが含有されています。ただ、心臓や腎臓の疾病のある人やニコチン過敏症の人には禁忌とされており、含有されているチアミン(ビタミンB1)分解酵素のチアミナーゼによるビタミンB1欠乏症を起こす恐れがあるとされているので注意が必要です。
なお「土筆」は春の季語として知られています。