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二階堂先生の「食べ物は薬」
ザクロ- 希望のシンボルとされる縁起の良い果樹
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- ザクロ
- 学名:Punica granatum
- 科名:ミソハギ科(ザクロ科)
- 和名:ザクロ
- 英名:punic, common pomegranate
- 別名:安石榴、石榴
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インド北西部から地中海沿岸が原産とされる落葉小高木で、もっとも古くから栽培された果樹の一つです。イランを中心にしてアフガニスタン、パキスタンなどに野生しており、人類の文明の初期からブドウとともに東西に伝えられています。紀元前の古い時代に地中海沿岸の古代国家にもたらされ、ソロモン王の神殿飾りや、ツタンカーメン王の墓から出土した器の形などにも見られています。中国へは紀元前2世紀ころに安石国(ペルシャ、現在のイラン)から伝来した榴(こぶ)のある木になる果実であるとのことで安石榴又は石榴と漢名が付けられ、北中部で栽培がなされ、八月十五夜には果実を月にお供えする所もあります。その後、平安時代に日本にももたらされ、この漢名をザクロと読んだとされています。
樹高は3~5mに達し、幹はこぶが多くねじれた形で小枝は棘となることもあり、葉は対生、無毛で托葉はなく全縁で光沢のある細長い形をしています。
初夏~梅雨の頃に枝の先に橙赤色の花を咲かせます。果実は直径が6cmの球形で、先に筒状のがくが残り、成熟すると光沢のある厚い外果皮が不整に割れ、薄い黄色の心皮で隔てられたたくさんの淡紅色をした種子が現れます。この種子の外皮は透明多汁で、淡紅色をしており甘酸っぱい味と独特の風味があり、生食したり、グレナデン・ジュースなどの清涼飲料の原料となります。100%果実発酵の飲むお酢として知られている美酒(ミチョ)の原料としても使われています。
成分としては生の根皮、樹皮(幹や枝)には揮発性油状のアルカロイドであるイソペレチエリンやタンニン、ベツリン、脂肪油などが、果皮には多量のタンニンが含有されています。
根皮、樹皮を煎じて寄生虫、特に条虫駆除薬として用いますが、胃粘膜を刺激するため胃炎の場合には使用不可で、大量に使用した場合には嘔吐、悪心、めまい、下痢などの副作用が知られています。終戦後までは日本には寄生虫が多かったためザクロ皮は寄生虫駆除の重要な生薬で、特に条虫に対して有効とされていました。果皮は下痢止め、止血や扁桃腺、虫歯の痛み、口内のただれや口臭などに煎液を作り、うがいをして用いていました。
すべての部分が色々の媒染剤を用いた染色に利用されています。
ヨーロッパの紋章の中には実を開いて、赤い種を見せている図をルネッサンス時代には採用していました。
果実の中に多数の種を持っているので、子孫繁栄の縁起の良い木とされ、世界的にも希望のシンボルとされています。