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二階堂先生の「食べ物は薬」
ナズナ - 春の七草の一つで食用、薬用や家紋に用いられています
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- ナズナ
- 学名:Capsella bursa-pastaris
- 科名:アブラナ科
- 和名:ナズナ
- 英名:shephard’s purse
- 別名:ペンペングサ、シャミセングサ、ガラガラ、チロリン、バチグサ、ビンボウグサ
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北半球の温帯地方に分布し、日本では古い時代にムギと共に渡来したと言われており、北海道から九州までの日当たりのよい所なら至る所に見られる越年草又は一年草です。
春に落ちた種が秋に芽を出し、冬になると羽状に切れ込んだ根生葉を放射状に地面に広げた状態で越冬します。地中には白い直根があって、春になると直立した茎が伸びてきます。
茎の上の方にある葉は先が尖った楕円形をしています。
翌年の早春から10cm以上の花茎を伸ばし、柄のある白色の十字花を多数付けます。
果実は軍配形をした逆三角形をして、三味線のバチに似ていることからペンペングサの別名が付けられています。果実の中には多数の細かい種子が入っています。
春のロゼット状の柔らかい若苗は茹でて和え物、浸し物、汁の実や生のまま薄い衣をつけて天ぷらにしたり、細かく刻んでご飯に混ぜてナズナ飯などにして食べます。春の七草の一つとして古くから邪気を祓い、万病を避けるということで茹でてから細切して粥に入れ七草粥にする風習に使われています。細いゴボウに似た白い根は煮付や、きんぴらにして食べられます。また生の花もそのまま摘んで食べられます。種を炒ったものをお茶にして飲むこともできます。
開花期の全草を天日乾燥したものは生薬とし、薺菜(せいさい)と呼ばれています。主として煎液として利尿、解熱や止血に用いたり、特に充血した目には冷やした煎液を綿に沁み込ませ洗眼するなどの民間療法が知られています。葉や根を黒焼きにして下痢や腹痛に使うこともあります。かつてイギリスでは止血薬としてヒドラスティスや麦角の代用として用い、麦角に似た子宮収縮作用があることからドイツの麦角とも言われていたようです。
成分としては有機酸、アミノ酸、炭水化物、フラボノイドの他にコリン、アセチルコリンのような副交感神経刺激作用を持ったものなどが知られています。
8枚のロゼット状の葉を図案化して八薺(やつなずな)として北陸地方の武家の家紋として用いられてきました。これは冬でも厳しい風をしのいで葉を広げた生命力の強さから選ばれたようです。
名前の由来には諸説が知られており、夏には無い「夏無き菜→夏無→ナズナ」、撫でたいほど可愛い菜「撫で菜→ナズナ」などがあります。
近縁種としてはイヌナズナ、グンバイナズナやマメグンバイナズナなどがありますが花の色や果実の形などが異なっています。