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二階堂先生の「食べ物は薬」
ノアザミ - 春に開花するアザミで山菜として、又生薬として用いられます
- ノアザミ
- 学名:Cirsium japonicum
- 科名:キク科
- 和名:ノアザミ
- 英名:japanese thistle, tiger thistle
- 別名:コアザミ、ドイツアザミ
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中国、日本に広く分布する多年性草本で、多くのアザミ属(Cirsium属)約150種ある中で、春に花が咲く唯一のアザミと言われています。日本では北海道を除く本州、四国、九州の平地や山野に自生しています。
茎はまれに2mに達するものもありますが、50~100cmで上部で枝分かれし、下部にはしばしば白色の綿毛が見られます。
やや厚い葉は羽状に深く裂けており、両面に毛があり、鋸歯の先端は硬くて棘になっています。茎に付く葉は互生しており、基部は抱茎となっています。
晩春~初夏にかけて、すべて筒状花(管状花)の、径が4~5cmの頭状花が枝先に上向きに付きます。花は普通は紅紫色をしていますが、白色や帯紅色のものも見られます。総苞の形は丸く、くも毛が見られ、総苞片はほとんど反り返らず、直立して先端が鋭い棘状になり、外側は粘液を出してつねに粘っています。雄ずいが先に熟すので、花からはじめに現れて虫などが触れると、接触運動によって花粉が押し出されてきて、虫などにつき、他の花へと運ばれてゆき受粉することになります。雄ずいが引っ込むと次に雌ずいが現れて受粉してから、また中に引き込んでしまいます。
蕾の出る前の若い茎の葉を掻き落とし、柔らかい部分の皮をむいて山菜として食用にします。くせの無いまろやかな味で、キク科の山菜には珍しく汁の実、煮物、和え物、炒め物や天ぷらなどにして、好まれて食べられています。塩漬けや、粕や味噌などで漬物として保存もできます。棘は茹でたり、揚げたりすれば気にならずに食べられます。根も切り取って少し煮てから、きんぴらにすれば食べられますし、色々の食べ方があり、香りも良く、美味しく食べられると好まれています。
夏から秋の開花期に掘り上げた根の泥を落として、水で洗ったのちに陽乾させたものが「大薊(たいけい)」又は「薊(けい)」と呼ばれる生薬です。ポリアセチレン化合物のシリネオールA~Eや、脂肪族化合物などの成分が知られており、血圧下降作用や抗菌作用があって健胃、利尿、強壮、解毒、止血薬などとして胃炎、生理不順、下血や鼻血などに用いられます。民間療法として、全草を水で煎じたものが、熱を取り、止血することから鼻血や吐血などに用いられたり、生の根からの汁を皮膚化膿症に用いる方法なども知られています。