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二階堂先生の「食べ物は薬」
バナナ - 滋養強壮の栄養食品
- バナナ
- 学名:(原種) Musa acuminata, Musa balbisiana
- 科名:バショウ科
- 英名:banana
- 別名:芭蕉、実芭蕉(みばしょう)、甘蕉、香蕉
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東南アジア原産で熱帯~亜熱帯地域で、バナナベルトと呼ばれる赤道を挟む南緯30゜から北緯30゜の間で栽培されている宿根性大型常緑の多年草です。
野生種は染色体が二倍体で種がありましたが、遺伝子の突然変異により染色体が三倍体となり、現在の栽培種は種の名残の黒点が見られる種なしバナナです。従って栽培には茎の元から出る新芽を利用した苗によって行われています。
幹のように見えるのは茎ではなく、葉が重なり合った偽茎又は仮茎と呼ばれるもので、真性の茎は地下にあり短く横走しています。偽茎の先端から長楕円形の葉を大きく伸ばして広げます。偽茎の上部から赤紫色のバナナハートとも呼ばれる苞に覆われた花序が垂れ下がります。この花序は1本の果軸に果房が段状に付き、各々の果房には10~15本位の雌花すなわち果指が付いています。この果指が成長して房状のバナナになります。花茎がさらに伸び先端に雄花がやはり段状に次々と見られます。果房にある大きな花弁のように見える苞がめくれると、果実が房のように出て、次々と苞がめくれて1本の果軸に多くのバナナの房ができます。この果実ははじめのうちは下を向いていますが、太陽の光に向かい段々と上方に曲がって大きくなるため、湾曲した形になります。1本の偽茎からの開花は1回だけで、その後には株の根元の方から脇芽を出して枯死してしまいます。
果実の果皮は緑色から黄色が一般的ですが、ピンク、紫色など色々あります。熟してくると果皮にスィートスポット又はシュガースポットと言われる黒い斑点が見られますが、これは成熟具合のバロメーターとされています。
果実のバナナは生食用と料理用とで使われる品種は異なりますが、年間生産量は国連食糧農業機関(FAO)の統計(2012年)では合わせて示されており7700万トンで、その内インドが一番多く24%、次いで中国、フィリッピンが各々約10%で、日本は約2.5%の200万トンが南九州、沖縄などでシマバナナとして栽培されています。
バナナを主食とする地域もありますが、日本ではそのまま生食したり、ケーキやヨーグルトに入れたり、ジュースにしたりして使います。料理用バナナは生食のものよりデンプン、繊維質、ビタミンA等が豊富で煮たり、蒸したり加熱して食べられています。また揚げ物のバナナチップスやバナナビールなどにも加工されています。
滋養強壮のための栄養食品として食べられており、4、5本食べると緩下作用で便通が良くなるとも言われています。栄養成分としては糖分、食物繊維、タンパク質、ビタミンC、ミネラルのカリウム、マグネシウム、リンなどが多く含有されています。
花(蕾)も東南アジアの栽培地では食用としています。苞を除いた蕾を水で晒してアク抜きした後、炒めて調理します。
葉はバナナを包んで蒸すのに用いたり、調理器具や食器として用いられます。また熱帯地域では家の屋根材料としたり、バショウと同じように繊維を取って芭蕉布に織ったり、製紙原料として使われています。
バナナと同属のバショウ Musa basjoo の根を芭蕉根、葉を芭蕉葉と呼び、熱病、腫れ物、脚気、浮腫などに用います。また民間療法では根や葉を煎じて風邪に、生の葉の絞り汁を解熱・利尿薬に、生の葉の汁は傷の手当てに用います。
日本には熟した状態でのバナナは植物防疫法により輸入できず、また、防かび剤や殺菌剤が使われ、これらの薬品が軸から入ってしまうので両端は食べない方がよいとされていました。その後の公的機関での検証では果肉には薬品がほとんど検出されなかったことから、現在では先端を捨てる科学的根拠は無いとされています。