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二階堂先生の「食べ物は薬」
ニホンハッカ - 食品、化粧品、薬品などに大量に使われるメントール原料植物
- ニホンハッカ
- 学名:Mentha arvensis var. piperascens
- 科名:シソ科 (Laviatae)
- 英名:Japanese mint, corn mint, Japanese peppermint
- 別名:目草(めぐさ)、目覚草(めざましぐさ)、薄荷(ばか)
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アジア東部原産とされ、日本各地のやや湿った草地に自生している多年生植物です。日本では江戸時代初期(1817年)に岡山県で栽培が始められ、明治~第二次世界大戦までは世界最大の産地とされ、生産される薄荷脳は重要な輸出品とされていました。
茎は四角(方茎)で高さは20~40cmほどで直立し、地下茎、匍匐茎があり、主として繁殖は地下茎によっておこなわれます。
葉は長さ2~5cm、幅2~3cm、対生で短柄があり、長楕円形で先が尖り鋸歯があります。対生葉は各節でそれぞれ直角に付いています。茎や葉には毛の他にハッカ油が入っている腺毛が沢山見られ、葉や茎を手で揉むと腺毛が破れて独特のハッカの香りがします。
花は夏から秋にかけて葉腋に短柄のある淡紫色の小唇形花を密に輪生花序に付けます。
果実は小さい卵形の分果を作ります。
開花期前の地上部を採取し陰乾したものが生薬の「薄荷(はっか)」で、葉だけを集めて乾燥したものは「薄荷葉(はっかよう)」として良品の生薬として用いられます。茎葉を水蒸気蒸留して得た油(取卸油)を冷却して得た無色針状の結晶が「薄荷脳(はっかのう)」で、固形分を除いて得た精油が「薄荷油」です。
薄荷油にはメントールが主成分として70~90%含有されており、他にメントン、ピネン、カンフェンなどが含有されています。薄荷脳、薄荷油、メントールは菓子、歯みがき、飲料、化粧品などに大量に用いられ、また薬用としては芳香性健胃薬、駆風・発汗薬として煎じて飲まれるほか、神経病、頭痛、歯痛などに外用されます。またハチや虫の刺傷に生葉の汁を患部に擦りこんで使ったり、葉を浴剤として用いると疲労回復、腰痛、神経痛や皮膚の痒みに有効とされています。さらに加味逍遥散(かみしょうようさん)、涼隔散(りょうかくさん)や防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)などの漢方処方に配合されます。
葉で作ったハッカ酒は淡黄色で爽やかな香りがして、健胃整腸、鎮静などに効果があるとされています。
現在ではメントールは石油化学で得られるトルエンから安価に合成されるため、ニホンハッカの生産量は減少しています。