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二階堂先生の「食べ物は薬」

マコモタケ - 癖のない万能野菜

マコモタケ
  • マコモタケ
  • 学名:Zizania latifolia
  • 科名:イネ科
  • 英名:zizania shoots
  • 別名:菰角(こもづの) 菰菜 ガンツル 交白(ちゃおぱい) 冬笋(とんちょん)

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マコモタケ発生 マコモタケ 黒穂菌が出たマコモタケの断面 マコモタケ マコモタケ

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東アジア原産で沼地、湿地、河川などに大群をなしている大型の多年生水生植物、マコモに黒穂菌(Ustilago esculenta)が感染するとできます。マコモ黒穂菌はドイツのHenningsにより命名されたもので「食べられる黒穂菌」を意味しています。

茎の中の花芽に黒穂菌が寄生し、黒穂菌が分泌するインドール酢酸の刺激により花穂の原基が消失し、細胞分裂を促し、同時に同化養分が蓄積し肥大し、また軟化して白い菌エイであるタケノコのようなマコモタケを形成します。

中国では初物が採れると、まず天子様に献上すると言われていました。

現在一般に見られるマコモタケは栄養系と言われる栽培種のマコモに出来るもので、野生種では出来るマコモタケの数は多くできるが、小さく、黒穂胞子の形成が早いので食用には適していません。マコモタケの内部に黒穂胞子が形成されてくると、食感が悪くなり、食用には向かなくなります。このようなマコモタケはマコモズミ、マコモノネヅミなどと呼ばれ、昔は日本でも乾燥して粉末としたものを油と練って眉墨やお歯黒としたり、禿に塗ったりして使っていました。現在では漆工芸の世界で鎌倉彫のくすんだ古色づけや、渋い光沢を出すために必要なものとして使われています。

マコモは多年生植物なので一度黒穂菌が感染すると、地上部が枯れてしまっても地下茎の中で菌糸の状態で越冬し、翌年幼茎の先端部に移行して再びマコモタケを形成します。

中国では黒穂胞子が形成したマコモタケを乾燥・保存しておき、風邪の際に適量の塩と酢を入れて煮て煮汁と共に食べると解熱効果があるとされています。また新鮮な黒穂胞子が形成されていないマコモタケを、他の野菜と混ぜて炒めて食べると便秘に有効とされています。マコモタケは肉質が柔らかく、芳香と甘味を持つ歯触りの良いもので、タケノコとアスパラガスを合わせたような食感を持った、癖のない万能野菜と言えるでしょう。そのため色々の食材との相性も良く、酢の物、煮物、天ぷら、炒め物、混ぜご飯、漬物など多くの調理法に使うことが出来ます。中国ではよく知られた夏野菜でしたが今では通年栽培も可能になり、高級食材として用いられています。現在では日本でも多くの地方で栽培がなされるようになり、和食はもちろん、イタリアンやフレンチのような洋食にも使われるようになっています。

栄養成分としてはカリウム、リンなどのミネラル分やβカロテン、ビタミンC,K、葉酸などが多く含有されています。

中国・明の時代に出版された「本草綱目」にはマコモタケについて五臓(心臓、肺臓、脾臓、肝臓、腎臓)の機能を高めて、酒酔いに利き、塩と酢で煮て食べると炎症、心痛を無くし、解熱、消渇、黄疸除去、便通利尿、発熱・下痢を止め、鮒と食べると食欲増進、酔いをさまし、胆石の毒発防止があると記されています。

東邦大・薬学部の重信先生らにより、黒穂菌の水抽出物についての薬理作用が研究、報告され(1994年)、モルモット回腸を収縮させるアセチルコリン様作用を明らかにしています。この研究から黒穂菌が充満したマコモタケには腸の消化活動を活発にする性質があると考えられています。最近では静岡大・農学部の河岸先生らにより骨粗鬆症の予防、治療効果を見出し、さらに食品、医薬品、化粧品などの原料として用いうる新しい化合物について報告(2012年)しています。


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