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二階堂先生の「食べ物は薬」
ムベ - 無病長寿の果物、七五三の縁起木と言われます
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- ムベ
- 学名:Stauntonia hexaphylla
- 科名:アケビ科
- 和名:ムベ
- 英名:Japanese staunton vine
- 別名:トキワアケビ、ウベ、郁子、野木瓜
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日本原産で本州の関東以西の山野に自生し、沖縄から朝鮮半島南部の暖帯にまで分布するつる性常緑低木です。
茎は他の木に巻き付きながら5~6mにも伸びます。太さは1~2cmから太いものでは6cm位になり、長い柄を持った艶のある厚い葉を互生します。
花は4月頃から新芽の腋から柄が出て、淡緑色を帯びた白色の6枚のガク片を持った雄性花と雌性花とが散在して咲きます。花弁はともにありません。
10月頃、楕円形のアケビに似た果実が付き、熟すと暗紫色となり、果皮はアケビより薄く柔らかで、熟してもアケビのように裂開することはありません。果実には粘りのある透明なゼリー状の果肉と、黒色の小さな種が多数入っています。甘い果肉は食用にされ、滋養強壮効果がありますが、種を除いて食べるのには一苦労します。野生のムベではニホンザルの好物として知られており、種子を散布するのに一役かっています。
若芽は茹でてから水でさらし、和え物や浸し物に、果皮は茹でてから一晩水でさらした後、細切し油炒めで食べます。
茎や根を乾燥したものが生薬の野木瓜(やもっか)で、煎じて利尿剤、駆虫剤として服用されます。民間薬としては茎を腎臓病、尿道炎、膀胱炎などに、また、むくみ、利尿の目的で煎じて用います。
成分としては茎葉に配糖体のスタントニン、ムベニンやサポニンのスタントサイドA,B,Fなどが知られています。
その他の用途として強靭な蔓は結束用の紐として籠や細工物に使われます。また葉が幼木では3枚、その後5枚、実がなる頃には7枚になることから「七五三の縁起木」とも言われています。
伝統的に重んじられる果樹で、宮中に献上していたとされ、また古い書物には天智天皇が狩の途中で立ち寄った農家の老夫婦が非常に壮健なのを見て、その理由を聞いたところ、無病長寿の果物(ムベ)を食べているからとのことから「むべなるかな(もっともである)」と言われたことに由来すると言われています。現在でも近江八幡市北津田町では毎年秋に皇室、近江神宮や靖国神社に献上されています。