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二階堂先生の「食べ物は薬」
ヤマノイモ - 滋養強壮、精力減退、疲労回復に
- ヤマノイモ
- 学名:Dioscorea japonica
- 科名:ヤマノイモ科
- 英名:japanese yam
- 別名:山芋(やまいも)、自然薯(じねんじょ)、自然生(じねんじょ)、薯蕷(じょよ)
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日本原産で雌雄異株のつる性多年草で、日本各地の山野に多く自生し、朝鮮半島、中国にも分布しています。ヤマノイモ(山の芋)の名は里の芋(サトイモ)に対する名前で、自然に生えている(野生の)芋の意味で自然薯(じねんじょ)、自然生(じねんじょ)の別名も知られています。
葉は心臓披針形をして対生します。先端は尖り、基部は矢尻型をしており、上面は平滑で長い葉柄があります。葉縁は鋸歯のない全縁です。
茎は緑色で稜があり、つる状に伸びて分枝し、他の植物などに巻き付いて成長します。
夏に葉腋から白い花が穂状花序として付き、雄性花序は下垂し、雌性花序は直立します。
果実はさく果で、横広楕円形で、円形の翼を3個持っており、その中に種子が入っています。葉腋には黒褐色の球形をした栄養繁殖器官である零余子(むかご)が付き、現在ではこの零余子を用いた畑地栽培が行われています。
地中に長大な円柱形をした根茎(芋)を地下深くへ伸ばし、1mを超えることもあります。
同属植物のナガイモ Dioscorea batatas を混同して、ヤマノイモの名前で販売されていることがありますが、染色体数も異なるヤマノイモとは別種の植物です。ナガイモは中国原産の主として栽培されるもので、イチョウイモ群、ツクネイモ群、ナガイモ群などの品種が知られています。茎、葉、葉脈が紫色を帯び、葉の上面が平滑ではなく、根茎は横に長く伸びる点などがヤマノイモと異なっています。
皮をむいた芋は白色で、堅くてもろい、粘性の強いもので、麦とろ、茶碗蒸しの具、煮物、芋粥、揚げ物、菓子(かるかん等)原料、饅頭、練り物、蕎麦、はんぺん、お好み焼きなどのつなぎ材料などに利用されます。
成分は主成分のデンプンの他、ブドウ糖などの糖類、ジオスコランA~Fの多糖類、糖タンパク質、ジオスゲニンなどのステロール類、ジオスコレチンなどのアルカロイドと消化酵素のジアスターゼなどが知られています。この中でジオスコランやジオスコレチンには血糖降下作用が認められています。
皮を除いた根茎を乾燥したものを山薬(さんやく)と呼び、滋養強壮、消化促進、鎭咳、止瀉、止渇薬として用いたり、漢方の八味丸(はちみがん)、六味丸(ろくみがん)、啓脾湯(けいひとう)などの処方に配合されます。特に八味丸は中年以後の腰の弱り、精力減退、白内障、頻尿などに用いる代表的処方として知られています。
その他、ヤマノイモ酒にして滋養強壮、精力減退、疲労回復に用いたり、根茎を摺り下ろして火傷、ひび、しもやけに塗って用いたりします(ただし、アレルギー体質の人はこの方法は避けた方がよいでしょう)。
同属植物のオニドコロ Dioscorea tokoro はヤマノイモとほぼ同様の場所に生えており、この植物には有毒成分(ジオスチン)が含有されているので、葉の付き方、根茎が横走するなどの違いを観察して注意をする必要があります。