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二階堂先生の「食べ物は薬」
ヤマユリ - ユリ科で最大の花を付け、鱗茎は食用、薬用に使われます
- ヤマユリ
- 学名:Lilium auratum
- 科名:ユリ科
- 和名:ヤマユリ
- 英名:gold-banded lily, golden-rayed lily
- 別名:リョウリユリ(料理百合)、ホウライジユリ(鳳来寺百合)、エイザンユリ(叡山百合)、テンガイユリ(天蓋百合)、ヨシノユリ(吉野百合、芳野百合)、サンヒャクゴウ(山百合)
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日本原産で、東北から近畿地方にかけて分布し、日当たりの良い草原や山野に自生する日本特産の多年生草本植物です。
いわゆる「ユリ」は世界に100種近く知られており、日本には16種ほどが生育しています。花の咲き方からヤマユリ系、カノコユリ系、テッポウユリ系とスカシユリ系の4つに区別されており、通常ユリと呼ばれるのはヤマユリだとされています。山に自生していることから「山百合」と呼ばれ、多くの別名が知られています。学名の 「lilium」は「白い花」を、「auratum」は「黄金色」を意味しています。
茎は直立し1~1.5mの高さにもなり、革質で全縁、ほぼ無毛で披針形の葉が多数付いています。夏になると白色で、径が15~18cmとユリ科で最大級の花を横向きに咲かせます。花はやや反り返り、赤褐色の小さな斑点と、内側に黄色い筋が見られ、強い香気を漂わせています。
地中の鱗茎は大きく、黄白色をしており、肉厚の鱗片状の葉が集まったもので、下部から出る下根には多数の横皴があり、上に伸びた茎につく上根は普通の根で養分や水分を吸収する働きをしています。従って鱗茎を植える時に浅く植えると、上根を伸ばせないのでうまく育たないことになります。苦味の少ないヤマユリの鱗茎はオニユリやコオニユリなどと共にユリ根として古くから食用とされ、救荒食としても使われてきました。根を除いた鱗茎を水洗し鱗片葉を1枚ずつ剝がし、水と清酒を加えて茹でてから煮物、酒蒸し、天ぷら、きんとんなどにして食べられます。また葯を除いた花をだし汁と醤油で煮た花の煮付も知られています。栄養価が高く食物繊維のグルコマンナンが豊富で強壮効果もあって便秘などに効果があり、咳止めや産後の回復食などとしても知られています。ただし、アクが強い物なので食べ過ぎには注意する必要があります。
鱗茎の裂片をはがして陽乾したものが生薬の百合(びゃくごう)で漢方処方薬のほか、鎮咳、強壮、解熱、利尿などに使われます。さらに民間療法として煎液を微熱や動悸に用いたり、粉末を酢で練っておできや打ち身などに湿布する方法なども知られています。生薬「百合」の基原植物としてオニユリ、コオニユリやハカタユリなども知られています。
神奈川県の県花として知られ、また昔から美人のたとえとして「立てばシャクヤク(芍薬)、座ればボタン(牡丹)、歩く姿はユリ(百合)の花」といわれています。これら3つの生薬はともに婦人病の要薬として知られており、これらの生薬を用いると美人になるとの昔からの喩えは興味深いものです。