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杜仲葉(トチュウヨウ)「トチュウ」はトチュウ科植物の一属一種の珍しい単独種で、中国中央部が原産地とされる。学名を Eucommia ulmoides と言い、雌雄異種の落葉性の喬木で、成木の樹高は20mに達する。四川、陝西、河南、湖北、貴州省といった中国中央部の標高600~2500mの山地に自生しており、最近では栽培も行われている。 その樹皮を乾燥したものは、「杜仲」と称される漢薬(天然薬物)で、種々の漢方方剤中に配剤されてきた。 約2,000年前に著された中国最古の薬物書「神農本草経」には、上品(不老長寿の薬)に分類されている。その薬効として「腰脊痛を主る、中を補い精気を益す、筋骨を堅くする、志を強める、陰下湿痒、小便余瀝を除く」などと記されており、鎮痛、強壮、強精、利尿、降圧作用があって、腰痛や中風、高血圧の治療、残尿感や陰部のかゆみの改善効果などがあると考えられる。
明時代(1590年)に李時珍によって著され最も詳しい薬物書と言われている「本草綱目」には、「肝、腎を補って筋骨を強めて、腰膝疼痛の要薬である」と記されており、肝臓、腎臓機能を亢進して強壮、強精、鎮痛の目的で用いられる重要な薬であったと思われる。 しかし、生長したトチュウ葉部については薬用とされた記録は認められないが、中国少数民族が、お粥、炒め物、煮物、およびほうじ茶として用いることが伝承されいる。 1978年貴州省薬品検験所と貴州省中医研究所により、トチュウ葉部が樹皮である杜仲と同じように血圧降下作用のあることが証明され、それ以降「トチュウ葉」が薬草茶として愛用されるようになった。 日本においても詳細な機能解明研究が行われた結果、非薬用部分であるトチュウの葉部が杜仲茶などの健康食品素材として繁用されることになった。 その理由として次の点が挙げられる。
そこで、豊富に入手可能で、かつ非薬用部分であることから食品として利用可能なトチュウ葉部の有効利用が検討されることになったと思われる。 日本では富山医科薬科大学のグループが最初にトチュウ葉部の新しい機能に着目して研究を進めた。その結果、ラットなどを用いて一過性の降圧作用、尿中電解質のはいせつ向上と利尿、滋養強壮、抗酸化および肝機能の亢進作用などが明らかにされた。 次に、熊本大学薬学部と日立造船および九州大学健康科学センターのグループは、トチュウ葉部の含有成分としてゲニポシド酸(8)などのイリドイド類、フラボノイド類、フェノール性化合物およびトリテルペン類を明らかにするとともに、高血圧の改善とがん予防効果のあることを報告した。 すなわち、自然発症高血圧ラットを用いてトチュウ葉エキスの血圧上昇抑制作用を確認するとともに、主要活性成分はゲニポシド酸(8)であることを推定している。 降圧臨床評価においては、103名の健常者を対象に二重盲検対照試験を行い、トチュウ葉エキス飲用群で平均血圧の有意な低下作用のあることを明らかにした。また、トチュウ葉の水溶性画分には、マイトマイシンCによる染色体異常の抑制作用が認められ、この画分中のゲニポシド酸などのイリドイド配糖体やフェノール性化合物に抑制活性のあることが明らかになっている。 さらに、トチュウ葉エキスの飲用によって加熱タンパク食品の摂取や喫煙による尿の変異原性が抑制されているなど、がん予防効果が臨床的にも判明している。 このほか、トチュウ葉エキスにラットでの高コレステロール血症の改善や脂肪肝の軽減作用が報告されており、ヒトヘのトチュウ葉配糖体の投与によって、総コレステロールが低下することも明らかにされている。 トチュウ葉を食品として用いるために次のような安全性評価が行われた。
このように、トチュウ葉はその有効性が科学的に支持されるとともに、安全性の高い素材であることから、最近「血圧が高めの方に適した食品」として特定保健用食品として認可を受けている。
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