意識は五臓(肝・心・脾・肺・腎)のひとつである心によってコントロールされています。心は陰陽のうちの陽に属するので、陽気が盛んな日中では心の機能は活発であり意識は明瞭で眠ることはあまりありません。一方、陰気が盛んになる夜間では心の機能が安静になり意識は沈潜し眠りに入ります。しかし、安静になるべき夜間に何らかの原因で心のはたらきが乱されると不眠が生じます。漢方では、ヒトそれぞれの体質、症状などのタイプに対応する方剤を選び、血行動態、自律神経系、胃腸障害を調節して改善をはかります。
タイプ別漢方方剤
血色がよく、のぼせ気味で、気分がイライラして落ちつかず興奮しやすい方。高血圧症、更年期障害などでみられる不眠にも。便秘があれば三黄瀉心湯を用いる。
・・・・黄連解毒湯、三黄瀉心湯など
大病後あるいは仕事で無理が続いて、疲れ、神経過敏になっている方。些細なことに神経を使って眠れないもの。
・・・・温胆湯など
胃腸が弱く、顔色すぐれず、腹にも脈にも力がない方。貧血、健忘、動悸、神経過敏、
不眠などで物忘れして困るというものによく、この症状があって眠れないものに用いる。
・・・・加味帰脾湯など
心身が疲労して眠ることのできないものに用いる。慢性病、老人の方で、夜になると目がさえて眠れないというものによい。
・・・・酸棗仁湯など
神経過敏で不眠を訴える、一見して丈夫そうな肥満体質の方。上腹部が膨満し、胸脇苦満があり、臍部で動悸が亢進し、便秘の傾向がある場合に。
・・・・柴胡加竜骨牡蠣湯など