• お問い合せ
  • サイトマップ
  • 個人情報保護
  • 交通アクセス
  • 漢方薬 漢方薬局 薬店のことなら きぐすり.com
  • ホームへ
  • 店舗紹介
  • 相談方法
  • よくあるご質問

 雨上がりの百間川沿いの堤防には、上流側下流側含めて僕一人がいた。流量が少ないのか、川底が一部水面から覗き、カラスがのんびりと動きを止めて休んでいた。カラス2羽と僕が、対岸の岡山城、その下に広がる後楽園の紅葉を独占していた。普段なら多くの人が行きかう遊歩道も、静かに日暮れを待っていた。
 高校と浪人時代を含めて4年間、僕はここから自転車で5分くらいの所に住んでいた。ただその4年間で、今日に勝る味わいを感じたことはなかった。僕にとっては、岡山一の商店街にある本屋に行く単なる近道でしかなかった。全国から後楽園を訪れる人たちの楽しみの岡山城も鶴見橋もみな、単なる近道で、観光客を縫う様にして自転車をこいでいた。ただひたすらに、学校と歩いて5分の下宿を4年間通っていただけのような気がする。何になりたいかの夢もなく、いや職業の知識もなくと言ったほうが正解だと思うが、ただひたすらにテストで1点でも多くとることだけが「仕事」のような日々だった。その結果で得たものがこれかと思うが、才能に恵まれていない人間、努力が苦手な人間に与えられたものを甘んじて受けるしかない。年齢を重ねるにしたがって世の不条理も姿を変える。
 百間川が旭川にそそぐ辺りから川下を見ると、相生橋の上から県庁が覗く。夕暮れには音楽が流れ、都会に来たような気になっていた。あれから半世紀、やり残したことがないくらい濃密な人生と、やり残したことが何かわからないくらい軽薄な人生が、こんなに似ているとは・・・


Copyright© Sakaemachi-Yamato Pharmacy. All Rights Reserved.