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70歳代 女性 
シャッターが上がるのを待ち構えたようにして入ってきた女性が求めたのは、乗り物酔いの薬。以前から予定していたものではなく、急に決断して必要になったのだと思う。
 昨日ニュースで津山の鶴山公園の桜が満開だと報じていた。恐らくそれを見て弟さんがお姉さんを誘ったのだと思う。たったそれだけのことだと、僕もこうして書き留めることはない日常のごくありふれた光景だが、なんと、その女性が昨年までは、1日何回も電話をしてきたり、診療所を受診したりしていた女性なのだ。何年振りかの、いや何十年ぶりかのお花見に、喜びを隠せない、80歳前の女性だ。
 何に対しての不安か分からないが、とにかく不安で不安で仕方ない。不安だから眠れない。不安だから食べられない。不安だから医療者を心から信じることが出来ない。その不安の正体は恐らく本人も分かっていないのではないだろうか。不安を連呼する姿は気の毒ではあるが、おかしくもある。病院で頂いている精神病薬こそ不安だと思うが、なぜかこの種の人達はそこのところは大らかで、僕など怖くて飲めそうにもない薬を何種類も飲める。
 僕はよく歩いて自然を愛でるように言っていた。ただ本当に辛い時はなかなかそれもできない。しかし運の良いことに、この方が住むところはとても広い砂浜があり、人も少ない。釣り人がのんびりと日がな一日竿の先を眺めているくらいの所だ。おまけに四国が割と近くに見えるから、なかなかいい所だ。数年前から散歩を欠かさないようになってくれていたが、花見に行くというのは予想外の飛躍だ。何段か一気に飛び上がったようなものだ。2時間近く車に揺られて行くことに不安を感じていないということだから。
 脳は本来異物を侵入させない関所で守られている。ところが人間様がそれを突破できる化学薬品を作ってから、出入り自由のオープンスクール。いい目が出るか悪い目が出るかは運しだい。調剤薬局でもある僕の薬局でも、大いに救われた人と、縁がなかった人がいる。
 そうした方に漢方薬を利用すると、上記のような素敵な転機を辿る人も出る。80歳になって再び「桜咲く」のもいいではないか。


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