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女性 80歳代
 血圧の上が高くて下が低い。これはかなりの不自然だし、危険だ。ところが本人は、最低血圧が結構低いから、安心している。自覚症状としては「ふらふらして何回も転んだ。まっすぐ歩けない」だったが、お医者さんは、脳循環を改善する薬とめまい止めを出して下さり、もう何年も同じ薬を飲んでいる。転ぶ回数が増えたから何とか漢方薬で活路を見出そうと訪ねてこられた。ご主人は1か月目からかなりの改善がみられ、結局13か月で完治で縁を切った。
 途中、ご主人から相談を受けたが、奥さんが鬱で困っていると言うものだった。ただご主人が家で煎じ薬を作るだけで奥さんは不機嫌で、ヤマト薬局に相談に行くように勧めても聞く耳を持たなかった。
 ところがご主人が完治してやって来なくなって4か月たった昨日、奥さんを連れてやって来た。おそらく奥さん自身も限界に達したのだと思う。
 問診を始めると奥さんは何も答えずに、ご主人が全て代弁した。ただ僕は奥さんの本当の体調を知りたかったので、ご主人の方を見ずに奥さんに向かって質問を繰り返した。すると奥さんがとつとつと答えを返してくれるようになった。
 そして何で困っているのか尋ねると「やる気が出ないことと、いてもたってもおれなくなり部屋の中を歩き回ること」の2点った。7年間、うつ病の薬を飲んでいたのがこういった理由だったのかと、なんとなく残念な気がした。と言うのは漢方薬が得意な分野だから。結局この2点を解決するだろう漢方薬を2週間分、それもあれだけ嫌がっていた煎じ薬を持って帰ってもらったのだが、この処方を決定するまで奥さんと結構話をした。
 そもそも、9年前に経営していたフランチャイズの店舗が集客できなくて、本部からいろいろ言われたことがきっかけでうつ病になったらしいが、「そんなことがあったら、誰でもウツウツしてくるわ~」と僕が言った辺りから、奥さんの口数が増えて、僕のやるべきことが見つかった。
 帰る時に奥さんが言った。「7年間、ずっと頭の中に靄がかかっていたけれど、今晴れた」と。毎日靄の中で苦しんでいたんだ。だからまるで痴呆かと思わせるくらい反応がなかったのだ。しかし、過去の職業を聞いて、本来は知的なご主人にふさわしい知性を持っていた方なんだと想像できた。
 嘗て、降ってわいたような環境に押しつぶされたのだろうが、僕みたいなくだらない話をする相手が周囲にいなかったのではないか。心の産業廃棄物処理場みたいな便利な人間が周囲にいなかったのではないか。霞くらい一気に吹き飛ばしてくれるような、おしゃべりが周囲にいなかったのではないか。
 この周囲とやらは、与えられるものか掴むものかは分からないが、人生を左右する大きな要素であることは間違いない。


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