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ストレスと漢方

ストレスと上手に付き合うためには、どんな漢方がよいのか――

ストレスと漢方

ストレスと漢方~ストレスと上手に付き合うために~

ストレスとは人間が刺激(ストレッサー)を受けたときに生じる「生体の歪み」である。
日本ではストレッサーと歪みを1つにした総称でストレスと使用する場合がほとんどだ。

ストレスには辛い、きついなどマイナスの印象があり、一般的にはあまり良い印象ではないが、ストレスは与え方により、仕事や勉強の能率を上げることなどのプラス効果も分かってきている。分かりやすいのはスポーツなどでプレッシャーを受けると好成績が得られる人がいるように、適度なストレスは仕事・勉強の達成感や爽快感を増幅させることもあることが認められている。

しかし、ストレスが適度に与えられる状態は難しく、基本的には疲労や過労、不快感など「過度な状態」で人に悪影響を与えることがほとんどだ。

ストレスには様々なものがある。

ストレス

  • 病気や怪我、睡眠不足、不規則な生活などが原因で感じる「身体的ストレス」。
  • 暑さ、寒さ、気圧の変化などから体感する「物理的ストレス」。
  • 騒音、空気汚染、住環境などが引き金となる「環境的ストレス」。
  • 家族や親しい人や恋人などの死、不幸などから感じる「精神的ストレス」。
  • 仕事や会社での役割・責任・ノルマ、多忙、不況、最近ではテロや戦争などが原因の「社会的ストレス」。
  • 職場、家族・親戚、地域などが引き起こす「人間関係ストレス」
などが挙げられる。

漢方では人間は「神経系・内分泌系・免疫系」のバランスで成り立っていると考えられている。このバランスにストレスがかかると、関係に乱れが生じてくる。それが神経系にくると自律神経失調症、内分泌系ではホルモンバランスの乱れ、免疫系では免疫力低下などに繋がる。こうした状態が長引くと様々な心身の失調を引き起こし、ストレス病として発症する。

ストレスによる依存病が増加

ストレスとの関連が大きい病気・症状を患部別に例示すると、神経系では頭痛、神経痛、顔面神経麻痺があり、循環器系では不整脈、心臓神経症、狭心症、高血圧症などがある。

また、呼吸器系では過換気症候群、気管支喘息が挙げられ、消化器系では胃・十二指腸潰瘍、慢性胃炎、過敏性腸症候群などで、内分泌系では摂食障害、肥満症、糖尿病などを発症するだろう。

メール

また、最近増加傾向を示しているのが精神神経系のストレス病で、うつ状態、うつ病、神経症、パニック障害、睡眠障害、依存症などの症状だ。その中で特に近年の特長と言えるのが依存症の増加で、これまでのアルコールやタバコ、薬物に加え、本人もあまり気付いていない買い物やゲーム、メールといったプチ依存症の増加が目立ってきている。

では、前述したようなストレス病を発症しないためにはどうすることができるのでしょうか?

ストレスの感受性には個人差が非常に大きい。人として生きている以上は、ストレスを完全に取り払うことは不可能に近い。ならばストレスによるマイナスの影響をできるだけ少なくするということを考えることができる。つまりストレスと上手に付き合うということであり、そのための手法のひとつとして、漢方の知恵を取り入れていくことが考えられるでしょう。

幅広い対応が可能な漢方治療

漢方の考え方にはストレスと関連があるものが多く、『心身一如』『未病』『気血水』『養生』などが代表的なものである。このうち未病については、医療制度改革などでも考え方として注目されており、病気というほどではないが調子が上がらない、病院で検査しても異常なしと診断される状態を指している。

こうした心身の不調サインを放置すると、ストレスによる歪みは大きくなり、本格的な病気へと発展していく危険性が高くなる。漢方の考え方では、未病のときから対応することが重要視されている。

 つまり西洋医学は循環器別に異常を探すことであり、視点を細分化したうえで原因に対処する「対処療法」である。これに対し漢方は、人間一人ひとりを固体として診たうえでアンバランスを整える「全人型療法」と言える。西洋と違って原因を特定できなくても対処できることが特長と言えるだろう。

漢方の治療の考えとしては気血水がある。

  • 『気』とは生命エネルギーなどのことである。
  • 『血』は血液とその働きを指している。
  • 『水』は血液以外の体内の水分とその働きを意味している。

この3要素が過不足なく調和が保たれ体内を順調に循環している状態が『健康』であると言える。

『気』の異常と考えられている症状では、気の量が不足して発症する気虚(倦怠感、無気力など)、気のうっ滞で発症する気うつ(憂うつ感、不安感など)、気の分布異常が起きて発症する気逆(のぼせ、頭痛など)が挙げられる。
『血』の異常と考えられる症状では、血のうっ滞が引き金となるお血(月経痛、冷えなど)、血の量が不足して起こる血虚(月経不調、貧血など)がある。
『水』の異常と捉えることができる症状は、水の代謝や分泌の異常で発症する水毒(発汗異常、めまいなど)である。

こうした症状を発症する前に対処することが「養生」である。自分の健康は自分で守ると言われているが、漢方で言えば「自分と心身を知る」ということに言い換えることができる。分かりやすく言えば、自身から発せられる危険信号を見逃さないということだ。

これまでは病気になったら医者に行けばいい、といったいわゆる「受け身」の人が多かった。これからは自らの健康を考え、心身と対話する努力型の健康が必要になるのではないか。その一歩としては食事、休養、運動などの生活リズムの見直しが手始めとして行えるのではないか。

また、こうした姿勢を持つことで健康になる人もいる。漢方は様々な人に対応できる幅広さを持っており、積極的に健康に役立ててもらいたいものである。

文:東京女子医科大学付属 東洋医学研究所 久米由美先生 / 協力:薬局新聞社
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