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病気の悩みを漢方で

漢方薬名の意味

温清飲(ウンセイイン)

1.温清飲(ウンセイイン)名の意味

 温清飲は、温めて低下した機能を改善する薬能です。は、熱症状をめ冷やす薬能(清熱 セイネツ)です。
 は、お茶のように随時飲んだり、冷たくして服用する煎じ薬です。

 本方は、の機能を担う四物湯(シモツトウ:図1下段の4生薬)と、の機能を担う黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ:図1上段の4生薬)の合剤です。黄連解毒湯の配合比率が四物湯より少なめになっています。

 このことから方剤名は、本方が、四物湯の適応となる乾燥病態と、黄連解毒湯の適応となる症状を軽減する方剤であることを示唆しています。

2.温清飲の適応

 温清飲は、皮膚がかさかさして色つやが悪くのぼせいらだちを伴う婦人科領域の不定愁訴や、熱感を伴う乾燥皮疹など慢性の皮膚科領域の病態に用いられる補血清熱剤です。

婦人科領域の月経不順不定愁訴に対する温清飲の応用例

・婦人更年期障碍の月経痛過多月経を軽減(桂枝茯苓丸と併用)

日東医誌., 2000; 50: 869-876


・高血圧を伴う更年期女性のホットフラッシュを軽減。

産婦人科漢方研究のあゆみ, 2007; 24: 93-97


・更年期女性ののぼせ抑うつを軽減。

漢方の臨床, 2011; 58: 1751-1755


皮膚科領域における温清飲の応用例

尋常性乾癬を改善(桂枝茯苓丸と併用)

皮膚, 1984; 26: 1166-1173


・掌蹠膿疱症の膿疱の新生減少紅斑鱗屑も軽快、外用ステロイド薬の塗布回数も減少
 (小柴胡湯と併用)

西日本皮膚科, 1986; 48: 114-118


・分子標的抗がん薬(セツキシマブ)による痤瘡様皮疹爪囲炎を軽減。

日東医誌., 2017; 68: 333-338


アトピー性皮膚炎発赤皮疹を軽減。外用ステロイド薬を減量。(湿潤皮疹には消風散
 適)。

日東医誌., 2017; 68: 333-338


 湿疹・皮膚炎(3)も参照してください。湿疹・皮膚炎には、3項目に示す関連方剤の一貫堂方も活用されています。

その他の領域における温清飲の応用例

べーチェット病ブドウ膜炎を軽減(桂枝茯苓丸などと併用)。

日東医誌., 2012; 63: 384-394


網膜中心静脈閉塞症視力回復血管新生を抑制(五苓散と併用)。

日東医誌., 2000; 50: 891-895


3.温清飲の8生薬を含む一貫堂方(イッカンドウホウ)

 一貫堂方は、感染症に罹りやすい体質(腺病質、解毒証体質)の改善剤として創案された日本独自の方剤群です。
 図2図3に示した3種の一貫堂方には、温清飲の8生薬が含まれています。

(サイコセイカントウ:15味)と荊芥連翹湯(ケイガイレンギョウトウ:17味)は、温清飲を含む四物黄連解毒湯図2の灰色枠内の11生薬)を含みます。

 柴胡清肝湯は、小児の習慣性扁桃炎反復性気道感染に活用されています(日東医誌., 2003; 54: 578-582)。漢方薬名の意味:柴胡清肝湯ヘルパンギーナを参照してください。
 本方は、アトピー性皮膚炎の乾燥皮疹にも用いられています(漢方と免疫アレルギー, 1992; 6: 80-86)。アトピー性皮膚炎(6)を参照してください。

は、解表薬図2印生薬)の比率が高いことが柴胡清肝湯との相違点です。化膿傾向の湿疹皮膚炎や、鼻の化膿性反復性炎症に適します。湿疹・皮膚炎(4)副鼻腔炎(2)にきびを参照してください。

 なお、柴胡清肝湯の適応は小児期、荊芥連翹湯は青年期とされていましたが、現代では小児、成人を区別せずに用いられています。

(リュウタンシャカントウ:16味)は、湿熱を軽減する生薬(図3印生薬)の比率が高いことが柴胡清肝湯荊芥連翹湯との相違点です。泌尿器科や婦人科の炎症性病態に使用されています。排尿異常(2)を参照してください。

 なお本方には配合生薬の異なる9味の製剤があります(図3)。適応は、共に泌尿器・生殖器の炎症症状です。漢方薬名の意味:竜胆瀉肝湯を参照してください。

4.温清飲の主要生薬を含む関連方剤

(ニョシンサン)は、温清飲の4生薬(黄芩黄連当帰川芎)に理気降気薬(リキコウキヤク)の香附子(コウブシ)や桂皮(ケイヒ)、補気薬人参を含みます。

 本方は、のぼせめまいを伴う婦人科領域の不定愁訴に用いられます(産婦人科漢方研究のあゆみ, 2003; 20: 95-100)。漢方薬名の意味:女神散動悸(2)を参照してください。

(セイジョウボウフウトウ)は、温清飲の4生薬(黄芩黄連山梔子川芎)に、祛風薬(キョフウヤク)の防風(ボウフウ)、荊芥(ケイガイ)や排膿薬桔梗と、清熱消瘡薬連翹(レンギョウ)を含みます。本方のすべての配合生薬は、荊芥連翹湯に含まれています。

 本方は、発赤化膿の顕著な赤いにきびなど顔面や頭部の皮疹に用いられています(日東医誌., 1996; 47: 425-432)。にきび漢方薬名の意味:清上防風湯を参照してください。

ちょっと一言:(トピックス)

温清飲の口訣(抜粋)

血虚を治す四物湯と、実熱を治す黄連解毒湯の合方です。皮膚が乾燥した婦人の雑病尋常性乾癬などの皮膚疾患に用いられています(三谷和合)。

・末梢循環障碍と炎症が基盤にある慢性色素性紫斑に適する。乾燥傾向の乾皮症アトピー性皮膚炎尋常性乾癬にも適する(寺本祐一)。

血虚熱証の病態を潤し滋養しながら熱を冷ます補血清熱解毒剤皮膚乾燥掻痒のぼせほてり不眠が使用目標になる(三浦於菟)。

2025年12月16日 改訂公開


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病気の悩みを漢方で

谿 忠人 先生

大阪大学薬学部卒・同大学院薬学研究科修了

  • 大阪大学薬学部・助手 (生薬材料学と生薬化学)
  • 近畿大学東洋医学研究所・講師・助教授 (臨床漢方薬学)
  • 住友金属工業(株)未来技術研究所・医薬研究部長 (創薬研究)
  • 富山大学和漢医薬学総合研究所・教授 (資源科学と漢方医療薬学)
  • 大阪大谷大学薬学部・教授 (漢方医療薬学)
  • 平成24(2012)年3月に大阪大谷大学を定年退職。
  • 大阪大谷大学名誉教授。
  • 日本東洋医学会名誉会員、和漢医薬学会名誉会員。
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