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あーだ、こうだの爽快!植物学
世にニンジンと名の付く植物は数々あれど、我も忍人 -薬用人参と食用人参-
世にニンジンと名の付く植物は数々あれど、全て形態学的に似ているわけでは無い。従って、植物分類学的には懸け離れた植物もある。
ニンジン(人参)の名は、漢字から想像できるように、ヒトの形に似たところから来ており、ウコギ科の薬用人参 (オタネニンジン, 高麗ニンジン) Panax ginseng のことである。
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オタネニンジン |
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ヒトの形に似た薬用人参 |
野菜のニンジン Daucus carota var. sativus はセリ科で、その根が薬用ニンジンに似ることに由来する。西アジア原産で、江戸時代に渡来した。体内でビタミンAに変化するのでプロビタミンAとも呼ばれるβ-カロチンの名は、carotaに由来するともいわれる。根が食用になるほか、倒円錐形果実は、鶴虱(かくしつ)と称し、条虫駆除薬として用いられる。
根の形が似た所から付いた植物以外では、食用ニンジンの葉に似た植物と、薬用ニンジンの掌状の葉(栃葉)に似た植物と、薬用効果が似る所から付いた植物と様々である。「ニンジン」の名の付くセリ科植物は沢山あるが、単に葉が似ている為に付けられた植物が多く、中には、ヨーロッパから渡来し、猛毒化合物を含む事で有名なドクニンジンConium macukatum 等もあり要注意である。
ウコギ科の薬用人参の仲間(Panax)は、広くアジアの照葉樹林帯下に自生しており、東南アジア諸国、中国、朝鮮半島、台湾や日本では主に、滋養強壮や補気健胃の目的で薬用とするが、ヒマラヤ地域では有用植物として扱っていない。
Panax属の葉は全て掌状(栃葉)で良く似るが、根の形態は大きく2系に分けられる。
食用人参型の根を持つ植物
北米のアメリカ人参(広東人参、洋参。決してアメリカの八百屋で売っている食用人参では無い) 中国東北部の薬用人参と、南西部で栽培される三七人参が代表種である。
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アメリカ人参(広東人参) |
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三七人参 |
根より根茎が発達して竹の節に似た形を持つ植物
日本や中国に自生する栃葉人参(竹節人参)や、ヒマラヤ山麓に自生するヒマラヤ人参が代表種である。
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トチバニンジン |
注意する事は、Panax属植物に期待する効果は同一では無い。
「オタネニンジン」の意は、徳川吉宗が栽培を推奨したので「御種人参」。
セリ科やウコギ科以外では、葉の形が薬用ニンジンに似たクマツヅラ科のニンジンボク Vitex cannnabifolia がある。海岸線に生えるハマゴウの仲間で、中国や台湾から渡来した栽培品で、果実は牡荊子と称し、感冒に煎用する。根は荊瀝と称し、去痰薬としていた。台湾ニンジンボクや西洋ニンジンボクが有名で、紫色に咲く花は香りもよく観賞用とされる。
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ニンジンボク |
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根の形や、薬用効果からは、キキョウ科のツリガネニンジン Adenophora triphylla やツルニンジン Codonopsis lanceolata がある。根を乾燥した物は、それぞれ沙参(しゃじん)、党参(とうじん)と称し、去痰や強壮目的に使用される。
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ツリガネニンジン |
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ツルニンジン |
最近、薬用ニンジン以外の植物に「何何人参」と名を付けて、薬用効果を連想させる商品があります。私は、長い間「薬用人参」の化学的研究に携わっていたが、忍の一字でありました。貴女様もですか。そのような人には、人参がいいかもしれません。
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