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あーだ、こうだの爽快!植物学

   

植物の種子は、なぜ一斉に発芽するの?

 「植物の種子は、なぜ一斉に発芽するのでしょうか?」

 と聞かれたことがあります。

 不思議ですね。

 しかし、答えは簡単です。そのような仕組みになっているからですし、そのほうが便利だからでしょう。こー言ってしまえば身もふたも在りません。一寸、考えてみることにします。

発芽条件の3つは?

 そのような仕組みとは、種子の間は発芽しないように物質が制御しているのでしょう。

 この物質は、アブシジン酸だと判っています。そのため発芽抑制物質とも、休眠物質とも言われております。

 とすると、発芽のセットは、この物質が少なくなるか、作用しなくなるか、発芽のための物質が生産されるかなど考えられます。この物質も明らかになっており、ジベレリン酸だといわれております。実際には、アブシジン酸の量が減り、休眠打破物質であるジベレリン酸の量が、一定量に蓄積されないと発芽しません。

 そのためには、充分な吸水と、適当な温度と、空気(酸素)が必要なのです。全ての種子の最低発芽条件として、この3つの条件があればいいのです。

発芽の条件:充分な吸水・適当な温度・空気(酸素)


 一般的には発芽の際に、養分は必要ありません。何故かと言うと、発芽に必要な養分は、種子の内部の子葉や胚乳に蓄えられているためです。ジベレリン酸が酵素誘導を行い、この酵素が胚乳の成分を分解して糖分を生産します。これらの糖が、各部に運ばれ、発芽のためのエネルギー基質となり、エネルギー生産サイクルが働き出すためです。

 3つの条件以外に、光を必要とする光発芽種子や、一定時間の低温処理(0℃で、数日間とか)、温浴処理(湯ざめ:アカシヤなどは煮えたぎった湯の中にいれ、冷めてから蒔く)、種皮障害処理(虫が付いた種子は発芽する)、硫酸処理、ホルモン処理などが必要な種子もあります。これらの処理は、発芽のためのジベレリン酸を一定量生産させるためであり、休眠期間短縮法としても使われます。光発芽種子は、暗所で発芽すると栄養分が足らなくなるためであり、光条件下で発芽することで栄養補給ができるのです。逆に、カボチャなどのように、光によって発芽が抑制される植物もあります。

 低温処理をしないと発芽しない植物は、冬の低温期に発芽してしまうと、低温のために枯死してしまう恐れがあるための自衛機能です。吸水速度の速い植物は短時間で発芽しますが、皮が厚いとか吸水が遅い種子は、自然条件では発芽に時間が掛かるか発芽しないため、種皮を傷つけたり、溶かしたりしなければなりません。

樹木の発芽の場合は結構複雑らしい。

発芽

 全ての種子が一斉に発芽して、成長したことを思うと、高木になればなるほど、空恐ろしい感がします。ドングリの仲間は乾燥させると発芽しなくなりますが、落葉性樹は直に発芽ではなくて発根します。しかし、常緑樹は温かくなって発芽、発根をするようです。複雑な処理が必要な樹木もあり、濃硫酸、その後0℃で1ヶ月、続いて28℃で10日間、これでヤット発芽する植物もあります。

 蒔くと直ぐ発芽する植物もありますが、多くの植物は、一定の休眠期間を経て発芽するので、発芽条件が整っている時に蒔かれた場合を除いては、蒔いても直には発芽しません。

 成長速度、方向がそろうのは、栄養物質による条件も係わってはいますが、主に日長や温度に対する反応がある程度決まっているからで、それには、体内の植物ホルモンバランスなどが重要な役割を果たしています。発芽や成長、開花の時期がそろわないと、子孫繁栄のための結実がうまくいきません。植物は、受動的結実や受動的種子散布が多いため、開花時期における昆虫や果実成熟時期における鳥、動物などの存在は大きな条件となります。

 思うに、私が成長に苦しんでいるのは、面の皮が厚かったせいかもしれません。

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