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帯状疱疹リンク とは、小児期にかかった水疱瘡ウイルス(水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV))が体内に潜伏したままで、疲労や加齢などによって免疫バランスが崩れた際に再活性化し、発症する感染症です。

特徴としては、身体の左右どちらか片側に神経痛のようなピリピリ感や、チクチクした痛み、多数の紅斑を持つ水疱が帯状に出現することが挙げられます。痛みは徐々に強まり、数週間続くことが多く、また、患部の皮膚は痛みだけでなくただれたようになることもあります。

ここで覚えておきたいことは、水疱瘡はうつりますが、帯状疱疹はうつらない、ということです。

再発性の帯状疱疹は年齢を重ねるとともに増加するという報告がなされており、80歳までの3人に1人が帯状疱疹を発症すると言われています。そのため50歳以上の方々には、帯状疱疹予防のワクチンを接種するよう奨励されています。

こちらの患者様は、当店にご来店される1週間前の暑い日(気温30℃程度)に外出し、その日の入浴中に発症しました。
脇下にチクチク感、胸部に圧迫感が生じ、数日後には左耳がチクチクする等の違和感が現れました。
今回はこの、漢方薬を使用した迅速な治療により2週間で帯状疱疹が完治した症例を追っていきたいと思います。

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【症例】
50代女性
身長:157cm 体重:45kg BMI:18.3

【初来店】
主訴
帯状疱疹にる背中のただれ
衣類でこすれた際の腹部・背中の痛み
左耳のチクチク感

1週間前、気温30℃の日に外出し同日夜に発症。
その他の発症原因としては、仕事のストレスによる疲労と自律神経失調も考えられる。
脇下のチクチク感と胸部の圧迫感にはじまり、数日後からは左耳にもチクチク感が出てきた。
服用中の薬:バラシクロビル、ロキソプロフェン、テプレノン、アクアチム軟膏

平素
睡眠:7時間、多夢
ストレス:仕事の人間関係からのストレス
精神:緊張しやすい、悩みやすい、イライラ、落ちこみ
汗:わりと多く、特に脇、背中、臀部にかきやすい
冷え:手足などの末端が冷えやすく、ほてりはない
動悸/息苦しさ:帯状疱疹発症後に少しあるが、それまでは全くなし
尿:10回/日
口喉:乾きやすい
目:白目が黄色っぽい
筋肉:首肩こり、背中痛がある
水分:1000ml/日、温かいもの

評価
沈2遅2細弱2緩2
腹直筋緊張:中~強
舌中、正常紅、歯痕なし
苔やや乾燥、薄白黄

体質:桂枝

漢方薬
煎じ薬: 帰耆建中湯合桂枝加竜骨牡蠣湯加茵蔯蒿

考察
・脇や背中、臀部に汗をかきやすく、イライラ、悩み事が多く緊張しがち。仕事のスレスが多い様子。
・首、肩こり、背中にも痛みがある。
・四肢末端が冷えやすい。
桂枝体質であると考え、また色白、やせ型であることから当帰も必要であると判断しました。
皮膚のただれ、チクチク、ピリピリ感の改善に帰耆建中湯、イライラ、緊張、多汗のため桂枝加竜骨牡蠣湯をチョイス。
・帯状疱疹による左腹部、背中のただれ
⇒組織再生を促す黄耆も必要であると判断。
・白目が少し黄色っぽい
茵蔯蒿を追加。


【2回目】
左耳のチクチク感が改善。
左体幹の帯状疱疹は、まだ赤みが残るが全体的にかさぶたになり始めた。
肩こり、背中の張り感ともに減少。
ロキソプロフェンの服用を中止したところ、夜中にピリピリ感、痛みが出てあまり眠れなかった。

精神:家庭内トラブルのため気分が不安定。他人の感情に振り回される傾向がある。
発汗:顔、脇などにかく。急に顔が熱くなることがある。
口渇:あり。水分摂取量は1000ml/日
便:2日に1回
尿:10回/日ほど

舌紅、苔黄膩、歯痕なし
⇒口渇、舌紅、苔黄膩がみられるため石膏を追加することに。

漢方薬
煎じ薬: 帰耆建中湯合桂枝加竜骨牡蠣湯加茵蔯蒿石膏

考察

・口渇があり、舌紅、苔黄膩、急に顔が熱くなる
石膏証が出ていると判断。そこで清熱を目的に、前回の漢方薬に石膏を追加しました。


【3回目】
ピリピリ感や痛みなどの違和感はもうほとんどなく、痒くなってきた。掻くと少し傷になる。赤みも減少。
帯状疱疹後の神経症状はほぼ寛解したため、漢方治療はこれで終了


【総評】
帯状疱疹は誰でも発症しうる厄介な病気です。
一度発症すれば免疫力が上がり再発しにくくはなりますが、免疫力が低下している際は再び発症することもあり得ます。

東洋医学では、帯状疱疹の発症には水が関係していると考えます。水が身体の一部に停滞、あるいは偏り、さらに衝逆反応が重なることで水疱が出現すると捉えるのです。
水の停滞には五苓散などの利水剤をよく使用しますが、この患者さんは日中トイレに行く回数が1日10回程度とすでに頻尿傾向であるため、衝逆反応に対する桂枝と痛みやピリピリ感に対する芍薬、甘草をメインとした小建中湯をベースに方剤を決めました。
また汗をかきやすい点を考慮したうえ、傷になった部位の組織再生を促すために黄耆、やせ型で色白であるため当帰を合わせた帰耆建中湯、緊張しやすくイライラや精神的不安もあり、発汗も強いため桂枝加竜骨牡蠣湯、口喉が乾きやすく、白目がやや黄色味を帯びているため茵蔯蒿を追加しました。

帯状疱疹の神経痛は長引いた分、治りにくくなりますが、今回の症例では患者様が迅速に治療にいらしたことも幸いし、治療開始から約2週間で無事に寛解に至ることが出来ました。
また帯状疱疹による皮膚症状だけでなく、精神的にも非常に落ち着かれたご様子でした。現在の心身状態に至るまでの経過をよく伺い、患者様に寄り添った治療や声掛けをすることでご安心されたことも良かったのだと思われます。

薬剤師 入多裕リンク

【参考文献】
漢方求真 許志泉著 桐書房, pp.28,34,132,306.
病気がみえる vol.14 皮膚科(第1版)帯状疱疹
MSDマニュアル プロフェッショナル版 帯状疱疹
Shiraki K. et al. Open Forum Infect Dis. 2017; Jan28;4(1): ofx007.
[https://psych.or.jp/wp-content/uploads/2021/01/92-5-8.pdfリンク ]

【関連項目】
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