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御影雅幸先生の漢方あれこれ

カゼと漢方(1)

ひき始め(急性期)

 昨今はセルフメディケーションの実践が勧められ,また薬局では容易に漢方薬(エキス剤)が手に入る時代です。素人療法は禁物ですが,ここでは漢方を理解する基本的知識として書いてみたいと思います。しっかりと理解して,正しくその恩恵にあずかっていただきたいと思います。

 漢方治療で失敗するのは実・虚の診断ミスだとよく言われます。「補虚瀉実(不足するものを補い,余分なものを体外へ出す)」が漢方治療の原則です(→陰陽と虚実,五行説)。カゼ(感冒)の治療においてもこの基本は同じです。ときに判断が難しい場合もありますが,一般に症状が激しく,汗が出ないで38度を超える高熱を出す人は実証,症状が緩和で汗が出て微熱(37度台)でとどまる人は虚証の場合が多いものです。また,高齢者はすべて虚証と考えましょう。

 「カゼと葛根湯」の項で書きましたように,体力があって汗が出ず寒気がしてガタガタ震えるような場合(実証型)には葛根湯です。このとき,節々が痛む場合は麻黄湯の方がよく効を奏します。薄い鼻水や痰が出る場合は小青龍湯を選択します。
 一方,日頃体力がない人で汗が出て悪風(風にあたるとゾクゾクと寒気がする)がある場合(虚証型)には桂枝湯です。妊娠中の人も本方がよく,決して葛根湯など実証の人に対する漢方薬を服用してはいけません。

 また,引き始めでもいきなり胃痛や食不振などの胃腸症状が出たり,また咳が出たりする場合は小柴胡湯や柴胡桂枝湯など柴胡が入った処方が適し,また高齢者や日頃体力がない人で,微熱があり身体がだるくて元気がない人には麻黄附子細辛湯が適します。
 さらに体力がない人には真武湯が適します。また,普段胃腸が弱くて神経質な人には香蘇散が選択されます。このように,カゼの初期にも証に合わせて様々な処方が選択されます。カゼに葛根湯は必ずしも正しくありません。
→カゼと葛根湯

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