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和の香り

香木の種類

~香りを表現する~

香木は、熱帯地方に産する或る種の樹木が傷付き、或は、特殊の菌が付いた後、倒れて土中に埋り、長い年月の後、中の樹脂分だけが凝集し、芳香を放つ様になったものを指します。

比重の関係で、水に沈むものを「沈香木」、或は「沈水香」と呼び、略して「沈香」と呼ばれるものが、最初「香木」として使われました。

名香

平安時代には良い香りのする香木を名香(ミョウゴウ)と読んで仏前に焚く香木を意味しましたが、室町時代になると「メイコウ」と発音して良い香りの「名物の香」の略語となり、「由緒ある香」「香気の優れた香」を指す様になりました。

香木の種類

名香の中でも、佐々木道譽所蔵の「180種名香」が古いものとして記録に残りますが、三條西實隆撰の「61種名香」が貴重な香気として現在も尊重・鑑賞されて居ます。これは、全国から集められた名香の中から、先ず11種(伽羅 6種・羅国 3種・真那伽 2種)を、次いで50種を選んで61種としたもので、その内容は、伽羅(キャラ)41種・羅国(ラコク)6種・真那蛮(マナバン)9種・真那伽(マナカ)5種となっています。

これを基に16世紀の初めに香の種類を4種と定めました。その後、大勢の人が香を嗜む様になって輸入品である香木の数量が、更に、遊び方の多様化からその種類の不足が目立ち、17世紀末に「佐曾羅(サソラ)」「寸聞多羅(スモタラ)」の2種を追加、更に、「伽羅」を「古伽羅」と「新伽羅」とに分けて、現在では香木を7種として各々のリズムやハーモニーを愉しむ様になりました。

香木の種類

木所 記号 五味 語源・船積港名・他
伽羅 "Kara"、ヒンズー語で黒の意味
羅国 シャム、現在のタイ
真那蛮 マナバル、インド東部
真那伽 マラッカ
佐曾羅 花一 サソリ、インド西部
寸聞多羅 花三 スマトラ島
新伽羅 花三    

「木所」は香木の種類を示し、「記号」はそれを判り易く使い易い形で表して居ます。
尚、記号の「ウ」は、闘香の時に名香を持参する「客」を示す「ウ冠」を表しています。
又、香道に限らず、香りの雰囲気を表現する言葉は非常に少なく、その上、具体的に記憶する手段もありません。そこで、昔に限らず現在でも、他の感覚用語を利用するか、或は、情景や詩歌等に結び付ける方法が用いられています。
『「源氏物語」の香り― 続』の項にある「六種の薫物」の表にも、その一例として香りと色などを「陰陽思想」「五行思想」と結び付けて示しましたが、香木の場合の一例が、上の表にある「五味」です。

六国五味

香りから受ける印象は人によって異なりますが、身近な感覚の一つに味覚があり、その用語が解りやすいので、香りと味とを結び付けた対応が、室町時代に纏められた香道の指南書の一つに示されています。その内容を参考の為、上の表に記しました。即ち、伽羅の香りは辛い、羅国は甘いと言った具合です。
初期の組香では「伽羅」だけで組まれていたとの記述が近衛家煕(コノエイエヒロ、1666~1736)の日記「槐(エンジュ)記」にあります。この方法は、香りに徹した優雅な遊びとは言えますが、これは当時の宮中だからこそ出来たもので然も香りの差は少なく奥義を極めた人でなければ行えないものでしょう。香木を産地や出荷地の名前を活用しながら6種類の香感に分けたのが「六国」で、それに対応する味を「五味」と関連付けました。


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