①卵子の異常
②子宮内膜機能不全
③子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜症
④卵管因子(水腫)
⑤免疫異常、ホルモン異常
⑥精子の異常
が考えられています。
今回は、⑤免疫異常、ホルモン異常について触れていきます。
免疫異常やホルモン異常は、
同種免疫異常、自己免疫異常、染色体異常、内分泌代謝異常などがあり、流産を繰り返す原因になります

同種免疫異常とは、免疫機構が胚や胎芽、胎児を異物と捉えて、体から排除しようとする反応です。
この場合は、着床不全不全外来にて相談する方法をとります。
検査項目:免疫学的検査、血液凝固系検査、内分泌代謝異常、染色体検査
免疫学的検査:同種免疫異常は、
・Th1細胞とTh2細胞の比率を調べます。
※10以上の場合、タクロリムスを投与を検討。※病院によって基準値は異なります。
免疫は細胞性免疫と液性免疫の2つがあり、前者はTh1、後者はTh2が中心を担っています。
胎児や胎盤を攻撃する働きのあるTh1が高くなると妊娠の維持ができない状態になります。
よって血中のTh1値を下げることでTh1/Th2のバランスをとり、胎児や胎盤に対する拒絶反応を抑えて妊娠の維持を継続させる治療をします。
・NK細胞活性を調べます。
NK細胞は妊娠の維持に必要な免疫寛容と関係します。この活性が亢進すると胎児を異物といて排除しようとすることが指摘されています。
治療は、イントラリピッド療法とピシバニール療法があり、NK細胞活性を低下させます。(ただ、この療法は、現時点でエビデンスは確率されてはいないようです)
自己免疫異常は、
・抗カルジオリピン抗体(IgG、IgM)、
・抗カルジオリピンβ2グリコプロテインI複合体抗体(抗CL・βGPI抗体)、
・ループスアンチコアグラント、
・抗フォスファチジルエタノールアミン抗体(抗PE抗体)
のような複数の抗リン脂質抗体を測定します。
通常、この抗体は、外部からの異物が侵入した際の防衛手段の役割を担いますが、抗体が産生されると、自己組織を異物と認識して自分自身の組織を攻撃し、血栓が生じて胚への酸素や栄養の供給が阻害されてしまいます。
治療は、低用量のアスピリン療法を検討します。
・抗核抗体を調べることで自己免疫疾患(身体の臓器を攻撃してしまう)の可能性を探ります。
受精障害(多核の受精卵)の原因になることがあるようです。
副腎皮質ステロイド剤の検討がありますが、エビデンスが低く検討の余地がありそうです。
血液凝固系検査は、APTT、PT、凝固第Ⅻ因子、プロテインS活性、プロテインC活性を測定します。
血液が固まりやすい傾向にあると胎盤を介した血液循環に影響を与えてしまいます。治療法としては、低用量アスピリンやヘパリン療法があります。
内分泌代謝異常検査は、
・甲状腺機能を測定するTSHやFT4
甲状腺機能低下の場合:FT4が少なく、TSHが大きい際は、チラーヂンを投与します。
甲状腺機能亢進の場合:FT4が大きく、TSHが小さい、自己抗体のTSHレセプター抗体(TRAb)有の場合は、プロパジール(チウラジール)を投与します。
・糖尿病やPCOSの疑いがあるかを調べるHbA1c
糖尿病治療薬のメトホルミンは、PCOSの排卵障害を改善することがわかっています。
血糖コントロールし、インスリンの過剰な分泌を抑制するため、卵巣でのテストステロンも抑制されて卵巣内のホルモンバランスも改善され排卵しやすくなると考えられています。
・黄体機能不全かどうかはP4値 で検査をします。
黄体期にhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンを投与します。hCGはLH作用があり排卵後の黄体刺激をしP4の分泌を促進します。
染色体検査は、夫婦染色体を調べます。
ご夫婦どちらかの染色体に転座(染色体の一部が他の染色体にくっついている状態)があった場合は、流産の可能性があります。
染色体異常には治療法はありませんが、検査で異常の有無を調べることは可能です。
漢方では、自己免疫異常不育症に対する柴苓湯の有用性があるようです。(phil漢方 No.22 2008)
以上、
ご参考下さい。
