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地図から学ぶ、生薬(きぐすり)のふるさと
霊峰「伊吹山」
新幹線で関ヶ原を抜けて滋賀県の近江長岡にかかる頃、右側の車窓から目に入ってくる山塊が伊吹山です。また京都を出て米原を過ぎる頃、左の車窓から見られます。
新幹線から見た伊吹山 |
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- 伊吹山周辺地図
標高1377mでこの付近ではずば抜けて高くそびえ立つ霊峰です。この山が薬草の宝庫と呼ばれているのです。
岐阜県と滋賀県の境界に位置していて、新幹線の通る地域でぐんと標高を下げていますが、伊吹山の北側は山並みが続いて、遠く白山まで続いています。伊吹山北尾根は岐阜県と滋賀県、福井県と石川県の県境の山並みとして続いているのです。
と言うことは白山からの山並みは北方系の植物群を運んで来て、一挙に関ヶ原の低い狭地は通ることができなくて伊吹山で分布が止まることになります。
伊吹山の植物の多様性
伊吹山の植物は凡そ1,300種類が知られています。
これらの植物は全山石灰岩からなる立地から好石灰岩性植物、白山から続く奥美濃の山並みを通って北方系の植物はこの伊吹山から一挙に標高を下げるので、分布が伊吹山で限止するのです。反対に暖地系の植物群は伊吹山の山麓で北上が拒まれています。
また、伊吹山山系は滋賀県と岐阜県の県境を形作っていますが、これは日本海側気候がこの県境で止められていることになります。また、太平洋側の温暖な気候は岐阜県側の伊吹山山麓で分布は進みません。
- ルリトラノオ
こうしたこの地域の独立峯と北に延びる伊吹北尾根の立地環境が植物の多様性を生み、維持されてきたと考えられます。複雑な環境がルリトラノオ、イブキレイジンソウなどの固有種を生み、多様な植物社会を誕生させたことになります。石灰岩性の立地は高木層発達を悪くし、低木層と草本植物層の発達を促していることからも植物多様性が促進されたのでしょう。
伊吹山の薬草たち
伊吹山山塊(山麓)には薬草も多く、岐阜県側の揖斐川町春日地域の調査では280種類の薬草が知られていて、全植物の2割強になり、薬草の占有率の高いことに驚きます。
それらの薬草は昔から、今も地域の方たちが健康を維持するために使われていることも伊吹山を囲む地域の特徴といえます。
伊吹山に何故薬草が多いかは、植物の多様性が多くの薬草を誕生させたことであり、地域の住民が巧みに利用していることに繋がるものです。
- 岐阜薬科大学名誉教授
水野瑞夫先生
- 1929年5月8日岐阜県に生まれる
- 岐阜薬学専門学校卒業(1956) 薬学博士
- 岐阜薬科大学に奉職(1956)--教授(生薬学教室)、学長(第7代)
- 岐阜薬科大学名誉教授(1997)
- 中国薬科大学及び中国科学院武漢植物研究所客員教授
- 自然学総合研究所会長
- 日本食品研究振興財団理事、三栄源エフエフアイ有用植物研究所顧問
- 伊吹山薬草サミット実行委員会顧問
伊吹山に関する著書
- 『伊吹山の薬草-基礎と応用-』(1997)
- 『春日村の薬草-伊吹山の薬草利用-』(1998)
- 『薬草の宝庫伊吹山』(1999)
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