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地図から学ぶ、生薬(きぐすり)のふるさと
チリといえば・・・・・・?
チリといえば・・・・・・?
答えに窮してしまうのが実情である。強いて言えば、地理の時間に習ったあの細長い国といった微かな記憶であろうか。日本から見て地球のほぼ真裏にあるからかチリに関しての情報は比較的少ないように思える。訪問を前に、一体どのような国なのか全く想像がつかず、不安に思ったものだった。
ローズヒップの産地までの道程
大阪・伊丹 → 東京・羽田 → 東京・成田 → アメリカ・アトランタ → チリ・サンティアゴ → チリ・コンセプシオン → チリ・ロス・アンヘレス
大阪から成田を経由して一路、アメリカ・アトランタへ。フライトは約12時間半。アトランタに到着してからチリ・サンティアゴへのフライトまで7時間の待ち時間。チリまで未だ道半ばというのに倦怠感と睡魔に襲われる。空港内が寒かったこともあり、トランスファーでこれほど時間の流れが長く感じられることはなかったように思える。やっとサンティアゴ行きの飛行機に搭乗しても更に約11時間半のフライトが待っている。エコノミークラスのあの狭い座席に押し込められ、到着したサンティアゴ空港。首都の空港にしては何となく閑散とした印象であった。
- チリ・サンティアゴの中央駅(Estaciõn Central)。サンティアゴから南部の都市へ向かう電車はすべてここを出発する。
初日は約1日半に及ぶ長旅の疲れを取るためにサンティアゴで一泊。空港近くのホテルにチェックイン後、半日のサンティアゴ市内観光に向かうことにした。タクシーでサンティアゴの中心部へと向かう。ホテル周辺は広大な平野が続き、遥か彼方にアンデス山脈の山際を臨むことができたが、市街地に近づくにつれ、南米特有のピンクや黄色のカラフルな建物が増えてくる。
- ホテルからサンティアゴの中心部へ向かう途中にあった建物。いかにも南米的なピンクや黄色のカラフルな建物が建ち並んでいた。
- 憲法広場(Plaza de la Constituciõn)から見たチリ・大統領府(Palacio de la Moneda: モネダ宮殿)。「モネダ」はスペイン語で「貨幣」という意味。この建物は当初、造幣局であったが、後に大統領府となった。
徐々に車も人通りも増え、雑然とした大都市の流れに巻き込まれていく。チリの政治の中心である大統領府周辺は官公庁が建ち並び、いかにもオフィス街という印象であった。
一方、16~19世紀に建造された中央郵便局や教会に囲まれ、サンティアゴ市民の憩いの場であるアルマス広場は旧宗主国であるスペインの雰囲気を醸し出していた。南米というと治安が悪いというステレオタイプ的なイメージがあったが、実際に道を歩いてみると、無論注意は必要であるが、それほど危険を感じることはなかった。
ローズヒップの産地へ
翌日、いよいよローズヒップの産地へと出発する。
サンティアゴから飛行機で南方の第8州の州都コンセプシオンへ。この第8州の主要産業が林業であることもあり、この空港の内装は「木のぬくもり」を前面に押し出した造りになっていた。空港からは訪問する会社の方の出迎えがあり、車でコンセプシオンから南東に約100kmのところにあるロス・アンヘレスへと向かう。途中、製材・製紙用のユーカリ林や松林、製材所などが点在していた。ロス・アンヘレスに近づくにつれ、フルーツの畑も見られるようになり、道端にローズヒップも自生していた。この時期、結実を迎えており、赤い実のなった木は無味乾燥な風景に彩りを添えていた。
ローズヒップの製造施設を視察
ロス・アンヘレス到着後、早速ローズヒップの製造施設を視察する。
この施設ではHACCP(Hazard Analysis-Critical Control Points: 危害分析重要管理点(監視)方式)やビオスイス(Biosuisse)、ISO9001、USDA(United States Department Agriculture: アメリカ合衆国農務省)のGAP(Good Agricultural Practice: 適正農業規範)に基づいてローズヒップ等のハーブの製造が行われている。
ローズヒップの収穫から輸出まで
- 収穫され工場に入荷したローズヒップ。
ローズヒップの収穫から輸出までの流れを簡略に説明します。
まず、集荷業者が収穫したローズヒップをトラックに積んでこの会社へと運んで来る。到着後、すぐに品質を確認し、基準を満たせば順次乾燥工程に廻される。
乾燥は全て機械によるもので、燃料にはアカシアの木を使用する。以前、チリ産のローズヒップでPCPの問題が発生したが、それは農薬に汚染された木を燃料に使用して乾燥させたためにローズヒップまで汚染されてしまったのがその顛末である。このため、この会社ではPCPの汚染を防止するため、乾燥時の燃料にも無農薬の燃料を使用している。
10.5時間、機械でほぼ乾燥させた後、倉庫内に山積みされ、更に静置乾燥させる。乾燥の終わったローズヒップは隣接したサイロに貯蔵され、加工を待つ。まず、サイロから加工場へと搬入された原料に混入した石、木屑、草などの異物を除去する。その後、粉砕して果皮と種子に分けて果皮内部の繊毛を風で飛ばす。次いで篩いにかけ、果皮の大きさを調節。そして更に2度目視選別して輸出用に包装される。
日本向けのものは、さらにもう1度選別する。
これは日本が異物など品質に非常にシビアだからである。
いよいよ産地訪問
次はいよいよ産地訪問。16~17世紀のスペイン統治時代に穀物などに種子が混入して野生化したローズヒップはチリの第8-9州の盆地(標高およそ140-250m)に自生している。チリのローズヒップは Rosa canina L. と Rosa rubiginosa L. の2種類に大別することができるが、R. canina L.は主として第8州、R. ruibiginosa L.は第9州に自生している。前者はピンク~淡いピンクの花を咲かせ、偽果は鮮やかな赤色をしている。一方、後者は薄いピンク~白色で、偽果は濃い赤色をしている。
- 鋤のような器具を使い、ローズヒップを収穫する。
上記の何れのローズヒップも野生で現在のところ、栽培品は一切流通していない。しかし、上述の通り、この第8州の主要産業は林業であるため、ユーカリ林や松林がローズヒップの自生地に隣接しており、林業がローズヒップの自生地を侵食している箇所も散見される。こういった地域では、伐採後に防腐剤が使用されており、野生のローズヒップであっても農薬が検出されることがある。このため、この会社では近くに林業がなく、農薬飛散の可能性のない自生地を所有。また、農薬飛散の問題のため、ローズヒップの栽培にも取り組んでおり、今後、ローズヒップの栽培品が市場に出回る可能性がある。
現地の人々との交流を通じ、ローズヒップなど、チリ産のハーブについての知識を深めるだけでなく、チリの料理や文化を体感することができ、非常に有意義なチリ訪問であった。
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