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地図から学ぶ、生薬(きぐすり)のふるさと
~石風呂の文化~
石風呂
鉄輪のむし湯の形態のものは、一般的には石風呂とも呼ばれています。
岩窟や密閉した石積の構築物の浴室に、センバ(松枝)、シダ、雑木などを燃やして高温とします。(鉄輪では地熱を利用しています)
浴室の床にモ(アマモなどの藻)や石菖、食塩で濡らしたムシロを敷き温まるというものであります。
いってみれば、今はやりのサウナや岩盤浴の元祖ともいえるでしょう。
石風呂の文化
この石風呂の文化は、大分の各地と山口、広島、愛媛、香川など瀬戸内海沿岸に残されています。
大分県内に残る石菖を使用した石風呂の遺構を訪れてみて、興味深かったのは、仏教との関わりが強いことでした。
豊後大野市尾崎の石風呂の右側岩壁には石造の薬師如来坐像が安置されていました。
- ▲ 尾崎の石風呂
また、杵築市山香町山浦長田の石風呂では、泉福寺(せんぷくじ)廃寺跡の西南側崖面を利用して造られています。
石風呂の一部は自然の岩を利用していますが、他は両面、板碑(いたび)、角塔婆(かくとうば)、五輪塔(ごりんとう)の基礎などを使ってつくられているのです。
- ▲ 杵築市山香町山浦長田の石風呂
昔は家に風呂があるところなどなく、寺が医療と憩いの場を兼ねて、こうした施設を備えていたと考えられます。僧侶が中国から仏教とともに、こうしたお風呂の文化を持ち帰ったのでしょうか。
石風呂自体、今は使われなくなっていますが、多くは近くには川があり、自生の石菖を見つけることができます。
川の近くに生えていた石菖での芳香浴の体験後、川にザブンと入って汗を流していた当時の人々の姿が目に浮かびます。
鉄輪のむし湯の悩みは、石菖が不足していることだといいます。
現在は、別府市温泉課の職員の方が、県内のあちこちを探し回って、辛うじて営業できる量を集めているそうですが、年々自生地が減っているとのこと。
市では栽培用地を借りて石菖の栽培を始めていますが、まだ使用する分の一部をまかなうぐらいだそうです。
市営のむし湯以外にも、鉄輪温泉の湯治旅館の数軒では、石菖を使ったむし湯が今でもあります。
昔は鉄輪付近の川に石菖はいくらでもあったそうですが、現在は古くからの湯治客の方が石菖のむし湯に入りたいがために、わざわざ自分のところに自生している石菖を定期的に送ってくれたり、知人から送ってもらったりして維持しているとのことです。
- はじめに
- 日本の生薬(きぐすり)を学ぼう
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- 忘れ去られた石菖[2]~石菖って?~
- 忘れ去られた石菖[3]~石風呂の文化~
- 忘れ去られた石菖[4]~茶や花の文化の中へ~
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