前回と同様に、今回も胚移植がうまくいかない時の原因についてあげていきます。
①卵子の異常
②子宮内膜機能不全
③子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜症
④卵管因子(水腫)
⑤免疫異常、ホルモン異常
⑥精子の異常
が考えられています。
②子宮内膜機能不全
・内膜の厚さ
内膜は1日に0.5mmのスピードで増殖して着床期に最も厚くなります。
新鮮胚移植の場合は8mm以上、融解胚移植は7mm以上で妊娠率、生産率は維持されることが報告されていますので、
それを基準にして移植を決定しているところもあります。※(Human Reproduction Vol.33,No10pp.1833-1888,2018)
・胚受容能発現
着床には、胚受容能発現が必要です。この発現は、一時的で、胚と内膜の相互作用により成立します。
着床しやすい最適な時期に胚盤胞が着床する必要があります。
それにはエストロゲンとプロゲステロンが重要な役割をします。
一般的にLHサージから7日前後、プロゲステロン投与から5日前後が着床の窓の時期(着床に最適な時期)と言われています。
胚移植のタイミングは12時間ほど着床しやすい時期とずれてしまっただけで胚が着床できないことがあります。
着床の窓を調べる検査(ERA検査)が行われており、それを調べることで適切な時期に移植をし、妊娠率の向上に役立てています。
・子宮内膜ポリープ
ポリープができる原因は、明らかではありませんが、エストロゲンの過剰な働きや妊娠・流産の他、人工授精や体外受精を繰り返す中で細菌による炎症を引き起こしてしまうためと考えられています。
子宮鏡・超音波でポリープの有無を検査し、もしあれば子宮内膜ポリープ掻把術を施して治療します。
上記のことが起こる背景には、
・女性ホルモンの影響
・子宮内膜の炎症
・血行不良
が考えられます。
従って子宮内膜機能不全の場合の漢方の考え方は、
・女性ホルモンのバランス
・子宮内膜の炎症をとる
・血行不良
を改善することです。
女性ホルモンの影響を腎の働きと考え、血行不良を瘀血、子宮内膜の炎症を熱と考えると、
腎をコントロールする漢方や瘀血を取り除く漢方、清熱をする漢方を使用して子宮内膜の機能の改善を図っていきます。
