「十炷香」は、香道の原点と言えます。 一つの香の時間的移り変わりを鑑賞する「一炷聞(イッチュウギキ)」が、四種の異なった香を聞き分け、同時に鑑賞するものへと転換したと言えるでしょう。
「十炷香」は、四種の香木を用意し、その内の三種の香を3包ずつ、一種の香を1包の計10包を打ち混ぜて聞き、その順序の正否を競うものです。(香道では香りを「嗅ぐ」とは言わず「聞く」と言います)。
「一の香」を3包、「二の香」を3包、「三の香」を3包、「ウの香」を1包、それぞれを「香包(コウヅツミ)」に入れて準備します。良く打ち交ぜて順に聞きます。
1番目に出た香は「一」、2番目に出た香が最初の香と同じと聞けば「一」、違うと聞けば「二」、3番目に出た香が最初の香と同じと聞けば「一」、2番目と同じと聞けば「二」、それまでと違うと聞けば「三」と記します。この様にして第十香まで聞いた後、正しい答を出香の順序に調べ答合せを行います。
試み香
最初に各々「一の香」から「ウの香」の4種の香を一つずつ予め聞く方法があり、これを「試み香(ココロミコウ)」と呼び、その後、上に記した「本香(ホンコウ)」を行う場合もあります。この試み香が在る場合を、御家流では「蓬莱十炷香」、志野流では「十種香」と呼び、無い場合は単に「十炷香」と呼びます。
又、答え方として、現在では各自が持つ「手記録紙」(又は「名乗紙」)を使い、出た順序に答を記入しますが、本来は各自の「香札」を「折据(オリスエ)」又は「札筒(フダヅツ)」に入れる方法を採ります。
蓬莱十炷香を表で示す
更に、上記の様な文章だけで説明するよりも、下記の様な図式表で示す方が簡略で判り易い場合が多いので、その一例として「蓬莱十炷香」を示します。
| 組香 |
試香 |
本香 |
炷数 |
木所 |
香銘 |
| 一 |
1 |
3 |
|
|
|
| 二 |
1 |
3 |
|
|
| 三 |
1 |
3 |
|
|
| ウ |
0 |
1 |
|
|
| 計 |
3 |
10 |
10 |
|
闘香
【十】を【闘】とも表して「十炷香」を「闘香」と呼ぶ揚合があります。
「闘香」と同様のものに「闘茶」があり、当時の公家・武家・文化人が参加していました。
「闘茶」は、現在の茶道七事式の内の「茶かぶき」へと進展していきました。