伏して平均寿命より元気でPPKの「健康寿命」 女性の要介護年数は男性より長い
近年、生を得て死ぬまでの「平均寿命」より、日常的に介護を必要としないで自立して生活できる生存期間、つまり「健康寿命」が重要視されております。すなわち寝たきりのままで終焉を迎えるのでなく、元気でPPK(ピンピンころり)を願いましょうということです。
2016年度の日本人の平均寿命は、男性80.98歳、女性87.14歳ですが、2019年度の平均寿命は、男性81.41歳、女性は87.45歳と伸びております。2016年度の健康寿命は、男性72.14歳、女性74.79歳で、2019年度は、男性72.68歳、女性は75.38歳です。平均寿命から健康寿命を差し引いた年数は、要介護年数(健康上何かしらの問題を抱えながら日常生活を送っている年数、寝たきり年数、お世話かけ年数)ということになります。従って、2016年度の要介護年数は、男性8.84年、女性は12.35年、2019年度では、男性8.73年、女性12.07年となり、女性のほうが凡そ3.4年ほど長くなります。最近20年ほどの統計結果は、女性は、男性より6~7年ほど長寿で、健康寿命も2.5~3.5年ほど長いのですが、要介護年数は男性のほうが短いことになります。要介護の間は、一般的に認知症か疾病治療中の割合が高く、男性は脳血管障害、女性は骨折に要注意である。老々介護で男性が介護役にまわりますと、日本人の多くの夫婦では、寿命の短い男性が一般的に年上でありますから大変です。「人」という漢字の一画が男性で、二画は女性と言われております。女性(二画)が早く亡くなると支えが無くなった男性は、逆に男性(一画)が亡くなると、閊えが無くなった女性は自由になって、さてどーなるのでしょうか。因みに、コロナ禍期間の平均寿命は短くなっていましたが、2023年度、男性は81.09歳、女性は87.14歳となり、以前に戻ってきました。なお、健康寿命男女平均値世界一は、シンガポールと日本、韓国が競っております。
健康寿命は延びても要介護(お世話かけ・寝たきり)年数は変わらないのが悩み
元気で長生き、健康寿命を延ばし、平均寿命と健康寿命との差、つまり「要介護年数」を縮めようと国を挙げて躍起になっております。平均寿命と健康寿命は、いずれも右上がりで伸びておりますが、男女とも、「要介護年数」は変わっておらず、この20数年の間、男性は凡そ9年、女性は12.5年であります。
高齢者が25%以上を占めるようになる2025年以後最大の問題点は、国民医療費の赤字であります。保険料、年金などいろいろな問題が生じてきます。そのためには、我々は、老後のための「貯金(貯蓄)」も大事ですが、より、セルフ・パワー・メディケーション(健康を害してからでなく、健康時から、自分自身の健康に責任を持ち、平生自分で予防すること)による「貯筋」も忘れてはいけません。
平均寿命は、戦後1947年から1956年の間に50歳から70歳台へ急激に伸び始めました。その謎は何でしょうか。とは言え、徳川家康は1615年75歳で没しています。(家康の長寿術に関しては、7回、8回を参照してください。)
日本の長寿は和食だけではない 肉・乳製品を噛む噛むwel噛むで健口長寿
世界一の平均寿命・健康長寿を誇る日本人、まさに長寿国日本であります。世界の各国から、何かくらしの中に秘密が有るのではないか、関心の的であります。健康長寿の要因としては、食事、運動、休養(睡眠)、環境(風土・ストレス等)、医療が考えられます。きっと和食のお蔭だということで、2013年ユネスコの「無形文化遺産」に登録されましたが、それだけではありません。戦後、急激な寿命の延びを示したのは、肉製品・乳製品のおかげでもあります。高齢者の多くは、食事量の低下と野菜、魚類中心の和食に偏りがちになり、サルコペニア(筋肉減少)、ロコモティブシンドローム(運動機能障害)、続いてフレイル(心身脆弱状態、低栄養)に陥っています。元気な高齢者は、歯が健康(健口)で、満遍なく肉製品・乳製品も食べておられます。介護施設の患者さんの中には、低栄養(聞こえはいいが、栄養失調)で、身体の栄養状態を示す決定的な指標となる血清アルブミン量の不足の方が多くみられます。血清アルブミンは、余命と生活機能障害の予知因子となりますので、高齢者の健康にとっては大きい意味があります。検査値3.5g以下の高齢者は、内臓たんぱく質減少などがみられ、現状で手術は難しく、まずはアルブミン量の改善が必須です。長寿食は「腸活」からみても、バランスの取れた栄養摂取であります。
神田 博史先生
詳しいプロフィールはこちら >
略歴
厚生省国立衛生試験所 生薬部
元 広島大学 薬学部 准教授・薬用植物園園長
元 安田女子大学 薬学部 教授・薬用植物園園長
元 広島国際大学 薬学部 教授・薬用植物園園長
元 広島国際大学 医療栄養学部 教授
内閣府地域活性化伝道師