若い時から養生法を学ばなければならない。身を慎み、生命を養うのは、人間としても最も重要なことであろう。(巻第一の3)
益軒は、「若い時から早く養生の術を学びなさい。身を慎み、命を養うのは、人として最も大事なことだ」と言いました。その上で、「草木を愛する人のように自分の身体を大切にしなさい」と言っています。ガーデニングをする人は、養生に向いているのでしょう。食養生で腹八分とよく言いますが、自分の身体をガーデニングしているようなもの、腹八分は腸内環境を整える養生になっていると思います。
春の養生 ~肝の働きが活発になる季節~
自然界の木々や小さな虫でも、春の陽気に誘われ、芽を出したり、動き出したりします。
秋から冬にかけて、蓄えた栄養分を使っていっせいに活動的になるのが春なのです。春一番を言われる風までも吹き始め、春先はアレルギー疾患も多発いたします。
紀元前に書かれた東洋医学の医書「素問」に書かれている、春の養生法によると、「春の三ヶ月を発陳という。冬の間隠れていた全てのものを出し活動的になり始める時期。陽気が多くなり、人体も陽気が多くなります。」
日の入りと共に寝て、日の出と共に起きることだ。心身ともにのびのびと活動的な気持ち、あるいは活動するのが良い時期だ。これが春の気に応じる方法です。
「この春の気に逆らって静かに沈んだ状態でいると病気になる」と書かれています。
この時期すなわち木の芽時になるとアレルギー疾患を思ったり、皮膚病になるという人がいます。あるいは体がだるい・のぼせる・気が晴れない等を訴えてきます。
東洋医学の五臓の中の「肝」が一番早く働き初めるのがこの春の時期です。東洋医学では「肝」は疎泄をつかさどる」といって、精神的にリラックスした状態(人間はたえず気が流れており、これが滞ると、イライラしたり、落ち込んだり精神の失調状態が生じると考えています)を保つことに、「肝」が関与しています。西洋医学でいう自律神経系に東洋医学での「肝」が関わりあっています。
この「肝」の働きは、草木がゆふの間に根にためていた栄養物を使って発芽するように、冬の間に腎(東洋医学での五臓の中の腎)に蓄えられた栄養物(腎精といいます)のお陰で十分に働くようになっています。
東洋医学では「肝は血を蔵する」といって、血の持つ滋養作用によって、肝の気が健やかに働きリラックスした気持ちが保てるようになっています。
肝の気が健やかに働くためにも、春は体を良く動かし活動的な生活をすることが精神的にも良い状態を保つことにつながるのです。
解説:惠木 弘(恵心堂漢方研究所所長)