秋から冬にかけて、蓄えた栄養分を使って、新緑が生え生命力が湧いてくるものが春なのです。
春一番と言われる風までも吹き始め、春先はアレルギー疾患も多発いたします。
紀元前に書かれた東洋医学の医書「素問」に書かれている、春の養生法によると「春の三ヶ月を発陳という。冬の間隠れていた全てのものが芽を出し活動的になり始める時期だ。陽気が多くなり、人体も陽気が多くなる時期だ。日の入りと共に寝て、日の出と共に起きることだ。心身ともにのびのびと活動的な気持ち、あるいは活動するのが良い時期だ。これが春の気に応じる方法です。この春の気に逆らって静かに沈んだ状態でいると病気になる」と書かれています。
春は万物のエネルギー(気)が外に向かって発散し始める時期です。つまり静から動へ、陰から陽に変わる季節が春です。
東洋医学の五臓の中の「肝」が一番働き始めるのがこの春の時期なのです。東洋医学では「肝は疎泄をつかさどる」といって、精神的にリラックスした状態(人間はたえず気が流れており、これが滞ると、イライラしたり、落ち込んだり、精神の失調状態が生じると考えています)を保つことに、「肝」が関与しています。西洋医学で言う自律神経系に東洋医学での「肝」がかかわりあっています。
この「肝」の働きは、草木が冬の間に根にためた栄養物を使って発芽するように、冬の間に腎(東洋医学での五臓の中の腎)に蓄えられた栄養物(精と言います)のお陰で十分に働くようになっています。
東洋医学では「肝は血を蔵する」と言って、血の持つ滋養作用によって、肝の気が健やかに働き、リラックスした気持ちが保てるようになっています。
肝の気が健やかに働くためにも、春は体を良く動かし活動的な生活をして、ストレスを溜め込まないようにうまく気分転換をすることが精神的にも良い状態を保つことにつながるのです。
解説:惠木 弘(恵心堂漢方研究所所長)