体を温める漢方の知恵
香り高いシソの葉は実は心と体を癒すキー食材だった
食中毒がたちどころに治る紫色の生薬
そうめんに、冷ややっこに、刺身のつまやてんぷらに、シソは格好の香味野菜として重宝されています。
日本では大葉とも呼ばれるシソ、原産地はヒマラヤ、ビルマ、中国といわれ、食用には青ジソと赤ジソが用いられています。
食材としては青ジソのほうが一般的で、赤ジソは梅干しと一緒に漬け込まれたりしますね。
このシソは漢方処方によく使われる用途の広い生薬の一つ。
生薬名は蘇葉(そよう)または紫蘇葉(しそよう)といい、チリメンジソの葉や枝先を薬用に用います。
漢の時代、都に住んでいた若者が食中毒を起こして死にかけていたところ、名医の誉れ高い華侘(かだ)がある薬草を煎じて紫色の薬を作ったそうです。
この薬を飲んだ若者はすぐに回復したため、紫色の「蘇(よみがえ)る」薬という意味でこの薬草を「紫蘇」、つまりシソと呼ぶようになったと伝えられています。
シソは精油成分「ぺリアルデヒド」を豊富に含んでいるため香りが強く、この精油成分に防腐や殺菌効果があるとされています。
生薬としてはシソ特有の香りが高いものが良品で、9月上旬、枝葉が茂って花が咲き始めたころに収穫し、風通しのよいところで陰干ししてから葉を取りはがします。
生薬の紫蘇葉は口に入れるとかすかにピリッとしますが、漢方的性質は「辛、温」。
つまり味は辛くて温める作用があります。
主に、カゼをひいたときの症状、発熱、悪寒、せき、くしゃみに効くのは、体を温める作用に富んでいるからです。
このほか、嘔吐や精神不安に対して効果がありますが、これは芳香がもたらす効果といえるでしょう。
華侘の時代に、シソは食中毒にも効果があることが分かっていたわけですが、現代では食中毒に対しては生姜と一緒に服用したほうがより効果的です。
解説:惠木 弘(恵心堂漢方研究所所長)