消化を助ける生薬が何もはいっていない安中散
「医食同源」は中国で、紀元前から今日に至るまで庶民の日常生活に脈々と伝わる考え方です。食べ物は薬であるというこの思想は、漢方薬を料理に取り入れた「薬膳」を発達させてきました。
秋は季節限定という人を含めて、グルメを楽しむ多くの人たちが旬の香りを楽しむ季節です。
食欲は本能の一つですが、食べたいからと言って腹いっぱい食べていいのでしょうか。
「腹八分に医者いらず」とはよく言ったもので、これこそ長寿の最大の秘訣なのです。
なにしろ、食べたものを消化する際に発生する活性酵素は、生活習慣病や老化促進の最大の原因なのですから。
そうはいっても、他の季節よりは食が過剰になりがちなのがこの季節。
過食の結果、胃がもたれたりする人が増える季節でもあるのです。
そこで胃薬の出番となります。
特に日本人に人気なのが漢方胃腸薬。
市販されている漢方胃腸薬は、「安中散(あんちゅうさん)」という処方がベースになっています。
でも暴飲暴食で胃が弱っている場合は、安中散には消化を助けるような生薬が何も入っていません。
お飲みになった安中散でいい香りを経験したことがありますか?
安中散は成分の8割が本来香りの強い生薬で、その香りの力で胃の働きを改善していく処方なのです。
ですから香りを感じられるような安中散ならいいのですが、それを追求すると生薬の一つ一つが洗練された高価なものでなくてはなりません。
今の市販価格ではなかなかその品質は実現できないのです。
解説:惠木 弘(恵心堂漢方研究所所長)