私たちが子供の頃、ちゃぶ台には必ず煙草と灰皿が置いてあり、その前には怖い“頑固親父”が座っている光景がありました。
最近になってようやく『禁煙』が理解され始めたようで、家の中で煙草を吸わない(吸わせてもらえない?)お父さんたちもいるようです。
勿論、“歩き煙草”なんてもっての外、街中でも喫煙者の居場所はどんどん減りつつあります。
そんな訳で、じゃあひとつ禁煙でもしてみるか「お医者さんに相談だ!」とか言っているしなあと考えた貴方、大変良いことですので是非おやりなさい。
そこで「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」と言うこともあり、喫煙習慣すなわちニコチン依存症について少し考えてみましょう。
1、煙草が止められない
仕事前のコーヒータイムに1本、お昼休みに屋上で1本、会議の前にもとりあえず1本、飲み屋のカウンターで盛り上がったら1本、イライラするとつい1本・・・。
喫煙習慣はなかなか止められません。
その原因はタバコに含まれる“ニコチン”による依存症です。
人間の脳機能は様々な“神経伝達物質”によって支えられています。
中でも「ドパミン」という物質は“喜び”とか“快感”を伝えるとされています。
ニコチンが神経の受容体(神経伝達物質が作用する場所)と結合すると、その神経の末端からドパミンが放出され脳が快感を得るわけです。
この回路を脳内の『ドパミン報酬系』と呼んでいます。ドパミン(快楽)が欲しいためにニコチン(タバコ)を繰り返し摂取する癖(喫煙習慣)が身に付くのです。
その結果として“タバコが止められない(ニコチン依存症)”になってしまうのです。
2、煙草の影響とは
タバコには色々な種類の有害物質が含まれています。喫煙習慣(ニコチン依存症)の原因であるニコチン以外にも、タール(やに)の中には40種類以上の発がん性物質が含まれています。
ちなみに、世界で初めて人工的に「癌」を発生させることに成功したのは日本人(山極勝三郎博士と助手の市川厚一)で、ウサギの耳にコールタールを3年間塗り続けて皮膚がんを作り出しました。
これ以外にもCOPD(肺気腫)の原因となるオキシダント(有毒粒子状物質)や、脳梗塞・心筋梗塞になる”血管障害”の原因として一酸化炭素などが含まれています。
3、禁煙マニュアル
(1)「タバコ」が健康に悪いことを理解する:
障害された血管(動脈硬化)や肺(呼吸機能)はタバコを止めると年齢相応の状態に戻ります。
ただし、肺がんやCOPD(肺気腫)などは治療が必要です。
(2)「喫煙習慣(タバコを吸う習慣)」は環境である:
タバコの買いだめをしていませんか?
色々な場所にタバコやライターや灰皿が置いてありませんか?
タバコを吸える場所(パチンコ、飲み屋、喫煙コーナー)に近づいていませんか?
まずは「どうやったらタバコと縁を切れるのか」を考えてみましょう。
(3)「喫煙衝動(タバコを吸いたくて堪らない気持ち)」はニコチン依存による:
タバコが切れるとイライラするのは、脳内のニコチン受容体(神経のニコチンが作用する場所)でニコチンが不足するからです。
これを“ニコチン依存症”と言います。禁煙治療では、この「喫煙衝動」を抑えるために、保険治療(病院で処方)ではチャンピックスを、我々の薬局ではニコチン製剤(ガム、パッチ=貼り薬)が使われます。
(4)「禁煙」はライフスタイル:
ニコチン離脱症状(禁断症状)が一番苦しいのは、禁煙開始後3~7日間と言われています。
一般的には6~8週間で「喫煙衝動」は収まります。
タバコの無いライフスタイルが出来れば大丈夫です。
「禁煙」とはタバコを嫌いになることではありません。
“継続こそ力“と肝に銘じてください。
さて、「禁煙」に利用できる漢方薬ですが、例えばニコチンの離脱症状(イライラ、不安感、焦燥感)や呼吸機能の改善、さらにタバコの毒性で痛めつけられた身体のために証に合った薬方を利用しても良いでしょう。
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更新日: 2013/08/06 |