ミイラとは、人為的あるいは自然に防腐処置が施されて、皮膚筋肉をはじめ内臓、血管などが乾燥し、萎縮した状態で保存される死体であることはご存じのとおりです。
そのミイラは昔、薬として使われており、日本でも徳川の時代に流行したようです。
何故、薬として使われるようになったのかというと、昔、アラビアの国に八十歳ほどの老人がいましたが、世捨て人となって、一切の飲食を経ち、身を洗い清め、蜂蜜だけを食べていたところ、一ヵ月ほど経つと、大小便ともみな蜜になり、やがて死にました。
そこで、これを石の棺におさめ、中に蜜を入れて死骸を浸し、埋葬しました。
それから百年経って、その棺を開いてみると、屍は蜜剤になっていて、怪我をした人がこれを少し飲むとたちまち治ったということが広まり、やがて日本でも徳川の時代にミイラが万病に効くと風評がたち、ミイラで金儲けをするものが出てきました。
当然のことですが、ミイラはそんなに沢山あるはずもなく、偽物のミイラが横行したのは言うまでもありません。
貴重で高価なミイラの代用としてミルラを使い、それでも庶民には手が出せないため、ミルラの代用として松脂に2、3種類の薬を混ぜ練り合わせたものを使っていたようです。
本物のミイラに何か効果があるのか分かりませんが、松脂には排膿・生肌・止痛の効能があるため、皮膚化膿症や皮膚炎・痔・外傷・筋肉痛・歯痛などには効果があったのかもしれません。