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漢方薬名の意味

加味逍遙散(カミショウヨウサン)

1.加味逍遙散(カミショウヨウサン)の意味

 加味逍遙散の加味は、牡丹皮(ボタンピ)と山梔子(サンシシ)を逍遙散に加味したことを示しています(図1)。丹梔逍遙散(タンシショウヨウサン)とも言われます。

 逍遙散は、気滞(キタイ)血虚(ケッキョ)気虚(キキョ)病態を軽減する理気(リキ)補血(ホケツ)補気(ホキ)剤です。

2.加味逍遙散の適応

 逍遙散の適応は、
気滞症状(抑うつ感もやもや感いらだち胸脇部の痞え感情緒不安定)と
血虚気虚症状(倦怠感めまい皮膚乾燥傾向冷え月経不順不眠)です。
 上記の病理は瘀血(オケツ:ケツの循環障碍)を誘発します。

 加味逍遙散は、この逍遙散の適応病態に加えて牡丹皮山梔子の適応となる瘀血熱証症状(発作性の発汗のぼせいらだちカーッとくる熱感冷えのぼせ)に用いられます。

 本方の適応病態の特徴は、愁訴が多様で変動感情の起伏が大きいことです。また患者の特性として「他人のことを意に介さない勝手な言動で医療者を怒らせる」という口訣(クケツ)があります(漢方の臨床. 2013)。

 本方は、婦人科領域で活用されています。

 は、婦人更年期障碍の不眠憂うつ頭痛めまいなどの精神神経症状に有用である。動悸、息切れには苓桂朮甘湯が適する。

症例集積研究 産婦人科漢方研究のあゆみ. 2009; 26: 24-29.

本方とホルモン補充療法(HRT)の効果の違いが明らかにされています。

 は、婦人更年期障碍のホルモン補充療法(HRT)では改善されにくい抑うつ不眠などの精神神経症状に効果を示すことが報告されています。

J. Obstet. Gynaecol. Res., 2013; 39: 223-228.

3.加味逍遙散の配合生薬

 加味逍遙散の配合10生薬(逍遙散+2生薬)を図2に示します。

 加味逍遙散の主な配合生薬は、柴胡(サイコ)当帰(トウキ)芍薬(シャクヤク)です。柴胡理気疎肝(リキソカン)には、肝血虚(カンケッキョ)を補う当帰芍薬を必要とする考えです。漢方薬名の意味:四逆散を参照してください。
 上記に加えて白朮(ビャクジュツ)茯苓(ブクリョウ)甘草(カンゾウ)など脾胃(ヒイ:消化機能)を整える生薬も含まれています。肝気滞(カンキタイ)による脾胃機能の障碍を軽減する配慮です。

4.加味逍遙散の関連方剤

4.1)婦人科

 は、(トウキシャクヤクサン)(ケイシブクリョウガン)とともに婦人科領域で頻用されています。 3方剤の配合生薬は、婦人更年期障碍(4)で比較しています。

 この3方剤を比較しました(図3)。方剤は、左から右にかけて、体力の虚証傾向から実証傾向、冷え症からのぼせ傾向の順に配列してあります。
 中央に記載した加味逍遙散は、当帰芍薬散当帰芍薬白朮茯苓を共有し、桂枝茯苓丸牡丹皮茯苓を共有しています。

 加味逍遙散と更年期不定愁訴に使用される関連方剤として、漢方薬名の意味:芎帰調血飲漢方薬名の意味:女神散も参照してください。

(カミキヒトウ)は、疲労感顔色不良を伴う人の心神不安(シンシンフアン:不安抑うつ不眠驚きやすい動悸)に適します。物事を考え込み過ぎる人に適します。漢方薬名の意味:帰脾湯を参照してください。

 本方は、補気剤四君子湯(シクンシトウ:図4の黄色枠内の6生薬)と安神薬(アンシンヤク:図4の黄緑色枠内の3生薬)を含むことが加味逍遙散との相違点です。

 両方剤は、疲労感(4)でも比較しています。

(ヨクカンサン)と(ヨクカンサンカチンピハンゲ)は、柴胡当帰釣藤鈎(チョウトウコウ)を組み合わせた理気熄風剤(リキソクフウザイ)です。
 本方は、加味逍遙散より怒りが顕著な病態に用いられます。いわゆる「キレやすい」人に適します。漢方薬名の意味:抑肝散で両方剤を比較しています。

 は、月経前症候群や月経前不快気分障碍に有用な方剤である。

症例集積研究 産婦人科漢方研究のあゆみ. 2015; 32: 76-78.

 加味逍遙散加味帰脾湯抑肝散を比較しました(図5)。方剤は、左から右にかけて、抑うつ傾向から興奮傾向の顕著な順に配列してあります。

 加味帰脾湯は、加味逍遙散より胃腸虚弱倦怠感顔色不良抑うつ気分の落ち込み)、不眠に用いられます。病態は気血両虚心神不安(シンシンフアン)です。

 加味逍遙散は、冷えのぼせなど愁訴が多彩で変動するなど感情の起伏が大きい病態に用いられます。便秘にも適します。病態は気滞血虚瘀血気虚です。

 抑肝散は、神経の昂ぶり怒りいらだち興奮性急落ち着きのなさ、緊張による手足のふるえを伴う人に適します。病態は肝陽上亢(カンヨウジョウコウ:肝風 カンフウ)です。

ちょっと一言:(トピックス)

加味逍遙散製剤の使用成績調査報告

 加味逍遙散製剤の全国440施設、906例の対象症例解析。
有効性:有効 48.9%、やや有効 41.1%、無効 10.0%。
副作用:32例37件。副作用発現症例率 2.89%。
  胃腸障碍(下痢、悪心)17例21件が最多。
  山梔子に由来する腸間膜静脈硬化症はみられなかった。

医学と薬学. 2018; 75: 1441-1452.)

(2023年10月6日 公開)


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