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病気の悩みを漢方で

高血圧
1.高血圧「随伴症状」において漢方薬にできること
一般用の漢方製剤の適応となるのは、軽症高血圧(正常高値やⅠ度高血圧)に伴う症状を軽減することです。血圧が160/100 mmHgを超えるⅡ度以上の高血圧は、西洋薬剤の治療を優先するべきでしょう。
漢方製剤は、ストレスの関与が大きく血圧が動揺し、頭痛、のぼせ、イライラ、動悸、不安感など多様な随伴症状を有する人に適します。
漢方医療では、このような症状群から気滞(キタイ)や気逆(キギャク)と診断して、生薬や処方を使い分けます。
このような気滞や気逆の症状に用いられる漢方処方は、下図の神経系を調整する薬剤に相当します。自覚症状を軽減して患者さんの生活の質(QOL:quality of life)を高めることが漢方医療の目標です。

2.高血圧「随伴症状」における気滞と気逆
気滞と気逆は、ストレスに対する反応の仕方から診断されます。
- 気滞は抑うつ傾向、不安感、集中力低下、胸のつかえ感などから判断され、
- 気逆はイライラ、焦燥感、頭痛、のぼせ、顔面紅潮などから診断されます。
なお気滞と気逆が併発することも多く、明確に区別し難い病態もあります。

3.理気薬
気滞と気逆を調整する漢方薬を理気薬(リキヤク)と総称します。なお気が上に衝き上げる気逆を調整する漢方薬は降気薬とも言われます。さらに現代の中国では、熄風(ソクフウ)薬や安神(アンジン)薬などより細かな分類がなされています。
これらを含めて主な理気薬を以下に示します。


気滞を調整する半夏と陳皮、気逆を調整する釣藤鈎と菊花が含まれている処方が釣藤散(チョウトウサン)です。
釣藤散は、かんしゃく傾向の人の頭痛、のぼせに用いられます。
4.高血圧随伴症状に用いられる主な漢方処方と理気薬

5.生活習慣病には節制が基本
本態性高血圧では、肥満を伴う場合が多いので運動不足や食べ過ぎなどの生活習慣の見直しが重要です。
野菜をしっかりと摂り、脂肪や塩分の少ない食事をしながら、この高血圧(1)~(5)で紹介した漢方製剤を体調と症状に応じて服用することをお勧めします。
これが一般用漢方製剤の一次予防への応用です。漢方は養生を基本とした予防医療です。これが漢方の予防医療の理念の「治未病」に通じます。

病気の悩みを漢方で
谿 忠人 先生
大阪大学薬学部卒・同大学院薬学研究科修了
- 大阪大学薬学部・助手 (生薬材料学と生薬化学)
- 近畿大学東洋医学研究所・講師・助教授 (臨床漢方薬学)
- 住友金属工業(株)未来技術研究所・医薬研究部長 (創薬研究)
- 富山大学和漢医薬学総合研究所・教授 (資源科学と漢方医療薬学)
- 大阪大谷大学薬学部・教授 (漢方医療薬学)
- 平成24(2012)年3月に大阪大谷大学を定年退職。
- 大阪大谷大学名誉教授。
- 日本東洋医学会名誉会員、和漢医薬学会名誉会員。


漢方医療とは
- (1)現代医療における漢方製剤
- (2)漢方薬局における診察
- (3)漢方薬局における診断(1)虚実と寒熱
- (4)漢方薬局における診断(2)気血水
- (5)漢方薬局における診断(3)病期
- (6)漢方薬局における診断(4)五臓
- (7)漢方処方の剤形
- (8)漢方医療と民間療法
- (9)セルメと健康相談
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