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病気の悩みを漢方で

漢方薬名の意味

麻黄附子細辛湯(マオウブシサイシントウ)

1.麻黄附子細辛湯(マオウブシサイシントウ)の名

 麻黄附子細辛湯の名は、すべての配合生薬を示しています(図1)。

 麻黄(マオウ)の薬能は、かぜ急性期寒け悪寒)と熱感表証)を、温めて発汗させて軽減する辛温解表(シンオンゲヒョウ)です。また息苦しさ)や咳嗽を軽減する宣肺平喘(センハイヘイゼン)、むくみを軽減する利水消腫(リスイショウシュ)です。

 附子(ブシ)の薬能は、新陳代謝機能の低下(腎陽虚 ジンヨウキョ)による冷え倦怠感痛みを軽減する補腎陽(ホジンヨウ)散寒止痛です。

 細辛(サイシン)の薬能は、寒けの顕著なかぜ急性期鼻水鼻づまりや、冷えによる痛みを温めて軽減する祛風(キョフウ)散寒止痛化痰(ケタン)です。

 このことから方剤名は、本方が、急性期の寒け悪寒鼻水や、慢性期の冷え痛みに適することを示唆しています。

2.麻黄附子細辛湯の適応

 麻黄附子細辛湯は、寒け冷えを伴う倦怠感痛みに用いられています(日東医誌., 1989; 39: 221-225)。
 漢方医学の適応病態は、陰証寒候虚証表証水毒と、(呼吸器)症状です。


 麻黄附子細辛湯は、体力の低下した高齢者や虚弱者の寒けが強く、水様性喀痰鼻水を伴うかぜに適します。かぜ(1)を参照してください。
 麻黄附子細辛湯の応用例を示します。

かぜ症候群の発熱、喀痰全身倦怠感

日東医誌., 1996; 47: 245-252


足腰の冷えを伴う高齢者の鼻閉を伴うかぜ

Geriat. Med. 2018; 56: 573-579



 麻黄附子細辛湯は、伴う鼻炎、花粉症の水様性鼻水鼻づまりに適します。

・通年性鼻アレルギーの くしゃみ発作鼻汁を軽減、鼻汁中の好酸球数を減少。


耳鼻臨床, 1990; 83: 155-165


・春季花粉症の鼻汁鼻閉眼周囲掻痒感流涙の改善効果は小青竜湯と同等程度。


準ランダム化比較試験 Therapeutic Research, 2002; 23: 2253-2259


下肢の冷感を伴うアレルギー性鼻炎症状顔面の皮膚症状を軽減。


漢方の臨床, 2024; 71: 113-118


 鼻水と鼻づまりを参照してください。
 基礎研究:麻黄附子細辛湯が、アレルギー鼻炎モデル動物の鼻粘膜からヒスタミン遊離を抑制した報告があります(耳展., 1992; 35:補5: 437-445)。

 

倦怠感(虚弱傾向の人の自律神経失調症)。

日東医誌., 1989; 39: 221-225


・入浴で軽快する寒冷蕁麻疹

漢方の臨床, 1995; 42: 327‐332


後頭神経痛(ロキソプロフェンと同等の効果)。

痛みと漢方, 2014; 24: 31-37


 麻黄附子細辛湯冷え痛みに対する応用は、3.2項目を参照してください。

3.麻黄附子細辛湯の関連方剤

(ショウセイリュウトウ)は、水様性喀痰を伴うかぜ急性期や、水様性鼻水くしゃみ鼻閉を伴う鼻かぜ鼻アレルギー花粉症に頻用される解表温肺化痰剤(オンパイケタンザイ)です。漢方薬名の意味:小青竜湯を参照してください。

 は、心窩部の痞え感吐き気を軽減する半夏(ハンゲ化痰降逆止嘔)を含み、麻黄附子細辛湯は、冷え痛みを軽減する附子を含むことが両方剤の相違点です(図2)。
 両方剤は、鼻水と鼻づまりでも比較しています。

(ケイキョウソウソウオウシンブトウ)は、かぜに伴う水様性無色鼻水に加えて、冷えると悪化する手足の冷え関節腫痛腰痛神経痛に用いられる散寒止痛剤です。
 本方は、麻黄附子細辛湯桂枝去芍薬湯図3黄色枠の桂枝湯から芍薬を除いた4生薬)の合剤です。麻黄附子細辛湯補益の薬能を付与した方剤です。

 桂姜棗草黄辛附湯をエキス製剤の併用で代用した例を以下に示します。


 ・冷えを伴う不定愁訴(頭痛疲労感)。

日東医誌., 2010: 61: 897-905


 ・インフルエンザの咽頭痛水様鼻漏倦怠感

日東医誌., 2010; 61: 360-365


 ・不定愁訴慢性疼痛冷え

女性心身医学, 2023; 28: 222-231



 ・帯状疱疹後神経痛

日東医誌., 1996; 47: 267-270


 ・関節炎

日東医誌., 2021; 72: 388-396


 桂枝加朮附湯(ケイシカジュツブトウ)と麻黄附子細辛湯の併用例は、桂姜棗草黄辛附湯散寒止痛薬附子を増量する狙いです。

ちょっと一言:(トピックス)

麻黄附子細辛湯口訣(抜粋)

・本方の適応は、蒼白な顔をして寒そうにし、元気がなくて横臥している。手足が冷え咽痛頭部冷感を訴える(山田光胤)。

・本方は、体表の風寒邪を温めて散じる助陽散寒剤寒湿を除き止痛する散寒除湿止痛剤(三浦於菟)。

・本方は、の双方に病変がある時に使用する。発熱前の寒け咽頭痛体力低下による冷えに適応がある(巽浩一郎)。

2024年12月20日 公開


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病気の悩みを漢方で

谿 忠人 先生

大阪大学薬学部卒・同大学院薬学研究科修了

  • 大阪大学薬学部・助手 (生薬材料学と生薬化学)
  • 近畿大学東洋医学研究所・講師・助教授 (臨床漢方薬学)
  • 住友金属工業(株)未来技術研究所・医薬研究部長 (創薬研究)
  • 富山大学和漢医薬学総合研究所・教授 (資源科学と漢方医療薬学)
  • 大阪大谷大学薬学部・教授 (漢方医療薬学)
  • 平成24(2012)年3月に大阪大谷大学を定年退職。
  • 大阪大谷大学名誉教授。
  • 日本東洋医学会名誉会員、和漢医薬学会名誉会員。
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