きぐすり.com は、漢方薬、女性の健康、サプリメント、ハーブの情報を専門家がやさしく解説しています。
病気の悩みを漢方で
1.湿疹・皮膚炎の発症と治療概要
湿疹・皮膚炎は皮膚のバリア機能が破綻して発症します。皮膚バリア機能は体外からの刺激物の侵入と、体内からの水分の発散を防ぐ機能です。
バリア機能が破綻し多様な皮疹が発現する原因には、
1) 外因と2) 内因があります(図1)。
現代科学の湿疹・皮膚炎の治療は、
1)外因を除去・回避し、2)内因を軽減するための生活指導をして皮膚バリア機能を維持することと、
3)多様な皮疹の熱感やかゆみを抑制するための薬物治療が基本になります。とくにステロイド軟膏を適正に使用することが重要です。
2.湿疹・皮膚炎の漢方治療の概要:漢方湿疹三角形
湿疹・皮膚炎の漢方治療は、生活指導を踏まえて、
・皮疹の病態:経時変化と皮疹の湿潤、化膿、乾燥、熱感と、
・内因の調整:皮疹の誘発や増悪に関与する内因(全身病態)調整を、総合的に考慮して生薬や方剤を選びます。
皮疹の経時変化を示した漢方湿疹三角形に皮疹を制御する薬能と主な生薬をまとめました(図2)。
漢方湿疹三角形の読み方:
・上部は熱証傾向で分泌物のある湿潤傾向の皮疹(湿証)、
・右辺下部は分泌物の少ない乾燥傾向の皮疹(燥証)です。
各皮疹を調整する薬能と主な生薬が示されています。
3.発赤熱感を伴う皮疹には清熱薬(セイネツヤク)
熱感を伴い分泌物のある皮疹は清熱燥湿薬(セイネツショウシツヤク)の適応になります。
黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)の4生薬(図3)や苦参(クジン)や連翹(レンギョウ)などです。
4.乾燥皮疹には補血滋潤薬(ホケツ ジジュンヤク)
分泌物の少ない乾燥皮疹は補血滋潤薬(ホケツ ジジュンヤク)の適応になります。四物湯(シモツトウ)の4生薬(図4)が基本です。
なお地黄には
・冷やす薬能の乾地黄(カンジオウ)と
・温める熟地黄(ジュクジオウ)が
あります。
エキス剤では乾地黄を使用していると思われますが、区別は明記されていません。
5.皮疹治療には発表薬(ハッピョウヤク)
5.1) 表証(ヒョウショウ)には発表薬: 皮疹は体表部の病変なので表証(ヒョウショウ)です。これは風邪(フウジャ)を発散させる発表、解表(ゲヒョウ)祛風(キョフウ)薬の適応病態です。
図5に示した荊芥(ケイガイ)と防風(ボウフウ)は代表的な祛風薬です。柴胡(サイコ)は清熱性の解表薬です。
5.2)急性期には発表薬: 漢方治療では発表や解表や祛風薬の配合比率の高い方剤は、初期病変に用いられます。
6.皮疹治療と内因調整を併用
漢方治療では、3-5項目に示した皮疹に着目した治療に加えて、図2で記したように皮疹の誘発や増悪に関与する内因(全身病態)を調整する治療も並行して進めます。
内因調整に関しては稿を改めて解説する予定です。
湿疹・皮膚炎の漢方相談
湿疹・皮膚炎を調整する主な生薬を解説しました。漢方治療では皮疹の性状を踏まえて適切な生薬を含む方剤が使い分けられます。
湿疹・皮膚炎の漢方相談では、皮疹部位の発赤や熱感と乾燥か湿潤かを話してください。それが適切な方剤を選ぶ重要な情報になります。
(2020年12月1日 公開)
病気の悩みを漢方で
谿 忠人 先生
大阪大学薬学部卒・同大学院薬学研究科修了
- 大阪大学薬学部・助手 (生薬材料学と生薬化学)
- 近畿大学東洋医学研究所・講師・助教授 (臨床漢方薬学)
- 住友金属工業(株)未来技術研究所・医薬研究部長 (創薬研究)
- 富山大学和漢医薬学総合研究所・教授 (資源科学と漢方医療薬学)
- 大阪大谷大学薬学部・教授 (漢方医療薬学)
- 平成24(2012)年3月に大阪大谷大学を定年退職。
- 大阪大谷大学名誉教授。
- 日本東洋医学会名誉会員、和漢医薬学会名誉会員。
漢方医療とは
- (1)現代医療における漢方製剤
- (2)漢方薬局における診察
- (3)漢方薬局における診断(1)虚実と寒熱
- (4)漢方薬局における診断(2)気血水
- (5)漢方薬局における診断(3)病期
- (6)漢方薬局における診断(4)五臓
- (7)漢方処方の剤形
- (8)漢方医療と民間療法
- (9)セルメと健康相談
症状と漢方薬
- (あ行)
- RSウイルス
- 足腰の衰え(虚弱)
- 足のむくみ
- アトピー性皮膚炎
- アルコール性肝炎
- アルツハイマー型認知症
- アレルギー性鼻炎
- 胃食道逆流症
- 胃腸かぜ
- 胃腸虚弱
- 胃腸虚弱(高齢者)
- 胃腸虚弱(フレイル)
- 胃痛
- 胃もたれ
- 意欲の低下
- 意欲低下(虚弱)
- イライラ
- イライラ(産後)
- インフルエンザ
- インポテンツ
- ウイルス肝炎
- うつ感
- 運動器症候群
- 円形脱毛症
- おしっこの悩み(前立腺肥大)
- (か行)
- 顔色不良(虚弱)
- 過活動膀胱
- 過換気症候群(過呼吸)
- 霍乱
- かぜ(風邪)
- 肩・首筋のこり
- 過敏性腸症候群
- 下部尿路症状
- 花粉症
- がん
- かんしゃく
- 関節痛(冷え症)
- 関節リウマチ
- 感染性胃腸炎
- 乾燥肌
- 肝臓病
- 気うつ
- 気うつ(産後)
- 気管支炎
- 機能性ディスペプシア
- 虚労
- 起立性調節障碍
- 緊張型頭痛
- 筋肉減少症
- 軽度認知障碍
- 月経周期の乱れ
- 月経痛(冷え症)
- 月経痛(冷えのぼせ症)
- 月経不順(周期の長短)
- 月経不順(血の道症)
- 月経前症候群(PMS)
- げっぷ
- 下痢
- 下痢(ゲンノショウコ)
- 高血圧
- 高血圧傾向(虚弱)
- 高血糖
- 好酸球性副鼻腔炎
- 口内炎
- 後鼻漏
- 高齢者
- 五十肩
- 呼吸困難(COPD)
- こじれた咳(感冒)
- 骨粗鬆症
- 子どもがほしい
- こむら返り
- コロナ後遺症
- (さ行)
- サルコペニア
- 産後の回復不全
- 残尿感(前立腺肥大)
- CFS(慢性疲労症候群)
- COPD(慢性閉塞性肺疾患)
- 湿疹
- 脂肪肝
- しもやけ
- しゃっくり
- 主婦湿疹
- 暑気あたり
- 女性不妊
- 自律神経失調症
- 脂漏性湿疹
- 尋常性乾癬
- 尋常性ざ瘡
- 頭重感
- 頭痛
- 頭痛(しめつける痛み)
- 頭痛(低気圧)
- 頭痛(婦人更年期障碍)
- ストレス胃
- 生理痛(冷え症)
- 生理痛(冷えのぼせ症)
- 生理不順(血の道症)
- 精力低下(男性)
- せき(咳)
- 咳(こじれた感冒)
- 脊柱管狭窄症
- 喘息
- 喘息(発作)
- 喘息(寛解)
- 前立腺肥大
- GERD
- (た行)
- たん(痰)
- 男性更年期障碍
- 男性不妊
- 蓄膿症
- 血の道症
- チック
- 痛風
- 手足口病
- 手足のしびれ(糖尿病)
- 低気圧頭痛
- 天気痛
- 動悸
- 凍瘡
- 糖尿病
- (な行)
- 内臓脂肪症候群(糖尿病)
- ながびく咳(感冒)
- 夏かぜ
- NASH
- 夏バテ
- 夏やせ
- 2型糖尿病
- にきび
- 尿意切迫
- 尿失禁
- 尿路結石
- 尿路不定愁訴
- 妊娠力をつけたい
- 認知症
- 脳血管性認知症
- 熱中症
- 脳梗塞と脳出血
- のぼせ感
- ノロウイルス下痢
- (は行)
- 肺気腫(COPD)
- 排尿異常
- 鼻アレルギー
- 鼻かぜ
- 鼻づまり
- 鼻水
- 非アルコール性肝炎
- 冷え症
- 冷えのぼせ症
- 鼻炎
- 皮膚炎
- 皮膚瘙痒症
- 肥満
- 肥満(糖尿病)
- 疲労感
- 頻尿
- PMS(月経前症候群)
- 不安定膀胱
- プール熱
- 腹痛
- 副鼻腔炎
- 婦人更年期障碍
- 不眠
- 不眠(産後)
- フレイル(虚弱)
- ヘルパンギーナ
- 変形性膝関節症
- 片頭痛
- 便通異常
- 便秘
- 膀胱結石
- (ま行)
- マタニティー・ブルー
- 慢性胃炎
- 慢性気管支炎(COPD)
- 慢性の咳(COPD)
- 慢性疲労症候群(CFS)
- 慢性閉塞性肺疾患
- むくみ(足のむくみ)
- 無月経
- 胸やけ
- メタボ肥満
- メタボリック・シンドローム(糖尿病)
- めまい
- めまい(婦人更年期障碍)
- (や行)
- 夜間頻尿
- やせと栄養失調
- 腰痛
- 抑うつ感
- 抑うつ感(虚弱)
- 夜泣き
- (ら行)
- 冷房下痢
- 老年症候群
- ロコモ
漢方薬名を選ぶ!
- 柴胡加竜骨牡蛎湯(サイコカリュウコツボレイトウ)
- 柴胡桂枝乾姜湯(サイコケイシカンキョウトウ)
- 柴胡桂枝湯(サイコケイシトウ)
- 柴胡清肝湯(サイコセイカントウ)
- 三黄瀉心湯(サンオウシャシントウ)
- 滋陰降火湯(ジインコウカトウ)
- 四逆散(シギャクサン)
- 十全大補湯(ジュウゼンタイホトウ)
- 潤腸湯(ジュンチョウトウ)
- 小柴胡湯(ショウサイコトウ)
- 小青竜湯(ショウセイリュウトウ)
- 消風散(ショウフウサン)
- 辛夷清肺湯(シンイセイハイトウ)
- 清上防風湯(セイジョウボウフウトウ)
- 清暑益気湯(セイショエッキトウ)
- 清心蓮子飲(セイシンレンシイン)
- 清肺湯(セイハイトウ)
- 疎経活血湯(ソケイカッケツトウ)