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病気の悩みを漢方で

漢方医療とは

1.正氣(セイキ:生命維持活動)を担う気血水津液

 漢方は患者の正氣(セイキ:生命維持活動自然治癒力)を調整する治療を重視しています。正氣(キ)(ケツ)(スイ 津液 シンエキ)の連携で維持されます(図1)。

 気血水津液)論は現代医療科学で理解するのは違和感がありますが、自律神経系内分泌系免疫系などに相当すると考えられます。

2.気血水津液)の病理とそれを調整する薬能

 疾病の病理病態は気血水津液)の失調として捉えます。図2気血水津液)の病理と調整する薬能をまとめました。

3.気血水津液)の病理を踏まえた治療薬の選択

 気血水津液)の病理を作業仮説として治療薬(生薬や方剤)を選択する道筋を図3に示しました。

治療薬を選択する道筋を例示すると以下のようになります。
(例)相談者の情報(体力虚弱な人の胃腸虚弱疲労倦怠感だるさ
  ⇒(体力の虚証脾胃気虚と判断・・・この病態診断が ショウ)
  ⇒(補気薬人参 ニンジン、黄耆 オウギの適応と考える)
  ⇒(補気薬を含む複数の補気剤との使い分けを鑑別した後に)
  ⇒(補気剤補中益気湯 ホチュウエッキトウを選択する)

4.気血水津液を活用するための基礎知識 

 図3の道筋に沿って方剤を選択するためには、
1)症状群から気血水津液)の病理を判断する基礎知識や、
2)病理を調整する生薬に関する基礎知識が必要です。
(さらに理屈に加えて、言葉で表現し難い相談者の雰囲気や心のモヤモヤを望診して感得する直観閃きという経験知も重要です)。

以下に1)2)に関する概要をまとめました。
 気血水津液)の病理には虚証実証があります。

4.1)気血水津液)の病理の虚証

 病理の虚証気血水津液)の量の不足(消耗と生成量の低下)と活動能力の低下病態です。
主な症状とそれを調整する主な生薬を図4にまとめました。

 それぞれの病理に青字で記載した温める薬能のある生薬と、赤字の冷やす生薬があります。

 気血水津液)の病理は併発します。例えば気虚は栄養不足や貧血傾向の血虚と併発することが多く、血虚津液不足と併発します。

 疲労倦怠感、だるさなどの気虚を補う補中益気湯(ホチュウエッキトウ)は、多様な虚弱状態を軽減するために活用されています。
 漢方薬名の意味:補中益気湯フレイルの漢方(2.胃腸虚弱)がんの漢方(1.虚弱状態)を参照してください。

4.2)気血水津液病理の実証

 病理の実証気血水津液)の循環の失調や病理産物の停滞した病態です。主な症状とそれを調整する主な生薬を図5にまとめました。

 気逆・気滞は循環不全の瘀血と併発します。
 病理の虚実も併発します。気虚では津液)の流れが停滞するので瘀血や胃もたれや吐き気の痰飲と併発します。

 抑うつやいらだちなどの気滞気逆を調整する抑肝散(ヨクカンサン)は神経の高ぶりや怒りを軽減する目的で活用されています。漢方薬名の意味:抑肝散認知症の漢方(3.アルツハイマー型認知症)を参照してください。

 この「病気の悩みを漢方で」の連載では気血水津液)論を踏まえた各種の疾病における生薬や方剤の使い分けを解説します。
 各解説を繰り返し読むことで徐々に理解を深めてください。

ちょっと一言:(トピックス)

(キ)

 の上の部分の「」は空気に相当します。流れる雲や湯気の形に由来します。の下の部分のは文字どおり食べ物です。
 正氣(生命維持活動)は、呼吸()と食べ物の消化吸収機能(脾胃)で維持されているのです。
 このを調整する生薬が人参補脾益肺)です。

(2021年2月17日 改訂公開)


病気の悩みを漢方で

谿 忠人 先生

大阪大学薬学部卒・同大学院薬学研究科修了

  • 大阪大学薬学部・助手 (生薬材料学と生薬化学)
  • 近畿大学東洋医学研究所・講師・助教授 (臨床漢方薬学)
  • 住友金属工業(株)未来技術研究所・医薬研究部長 (創薬研究)
  • 富山大学和漢医薬学総合研究所・教授 (資源科学と漢方医療薬学)
  • 大阪大谷大学薬学部・教授 (漢方医療薬学)
  • 平成24(2012)年3月に大阪大谷大学を定年退職。
  • 大阪大谷大学名誉教授。
  • 日本東洋医学会名誉会員、和漢医薬学会名誉会員。
谿 忠人先生のプロフィール
谿 忠人先生

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意欲低下(虚弱)
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月経痛(冷え症)
月経痛(冷えのぼせ症)
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月経不順(血の道症)
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下痢(ゲンノショウコ)
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高血圧傾向(虚弱)
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(さ行)
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残尿感(前立腺肥大)
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COPD(慢性閉塞性肺疾患)
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しゃっくり
主婦湿疹
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自律神経失調症
脂漏性湿疹
尋常性乾癬
尋常性ざ瘡
頭重感
頭痛
頭痛(しめつける痛み)
頭痛(低気圧)
頭痛(婦人更年期障碍)
ストレス胃
生理痛(冷え症)
生理痛(冷えのぼせ症)
生理不順(血の道症)
精力低下(男性)
せき(咳)
咳(こじれた感冒)
脊柱管狭窄症
喘息
喘息(発作)
喘息(寛解)
前立腺肥大
GERD
(た行)
たん(痰)
男性更年期障碍
男性不妊
蓄膿症
血の道症
チック
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手足のしびれ(糖尿病)
低気圧頭痛
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動悸
凍瘡
糖尿病
(な行)
内臓脂肪症候群(糖尿病)
ながびく咳(感冒)
夏かぜ
NASH
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夏やせ
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(は行)
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鼻かぜ
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冷えのぼせ症
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