病気の悩みを漢方で

１．尋常性乾癬（ｼﾞﾝｼﾞｮｳｾｲ ｶﾝｾﾝ）

　尋常性乾癬は表皮細胞が過剰に増殖角化する炎症性難治性の皮膚疾患です。盛り上がった紅斑と銀白色の鱗屑（ﾘﾝｾﾂ）がフケのようにはがれ落ちます。こすれて刺激を受けやすい部位に発現します。まれに膿疱を伴うこともあります。

　原因は遺伝要因､免疫異常､表皮細胞過剰増殖､脂質異常､ストレス､摩擦などが複合的に関与して発症します（図１）。

　現代科学医療では塗布薬の治療が主体となりますが､多様な治療方法が組み合わされます。皮膚科の専門医とご相談ください。

２．尋常性乾癬に用いられる主な生薬

　尋常性乾癬の漢方医療は皮疹の炎症症状やメタボ肥満の軽減を目指して生薬を選びます（図２）。

　・清熱薬（ｾｲﾈﾂﾔｸ）慢性的な皮疹の紅斑（ぼこっと隆起した赤い皮疹）
　・活血薬（ｶｯｹﾂﾔｸ）乾性炎症､苔癬化､皮疹部の血管拡張
　・潤燥薬（ｼﾞｭｳｿｳﾔｸ）苔癬化､フケのようにはがれ落ちる鱗屑
　・瀉下薬（ｼｬｹﾞﾔｸ）発症や増悪要因としての飽食やメタボ肥満

　漢方製剤の服用で皮疹は一次的に軽快しますが､難治性疾患なので完治は困難なようです。

３．尋常性乾癬に用いられる基本方剤

　尋常性乾癬の漢方治療は､清熱解毒･潤燥･活血剤の温清飲（ｳﾝｾｲｲﾝ）と活血剤の桂枝茯苓丸（ｹｲｼﾌﾞｸﾘｮｳｶﾞﾝ）の併用が基本になります（図３）。

　この２方剤の併用を基本にして､病態に応じて温清飲に解表薬（ｹﾞﾋｮｳﾔｸ）を加味した方剤や桂枝茯苓丸に関連する大黄（ﾀﾞｲｵｳ）配合剤を組み合わせます。

４．温清飲とその関連方剤

4.1）温清飲は尋常性乾癬の基本となる清熱剤です。本方は､清熱解毒剤の黄連解毒湯（ｵｳﾚﾝｹﾞﾄﾞｸﾄｳ）と補血活血剤の四物湯（ｼﾓﾂﾄｳ）の合剤です。
　全身ののぼせ､皮膚はかさかさして色つやが悪く患部に熱感のある湿疹･皮膚炎に用いられます。湿疹･皮膚炎（３）を参照してください。

4.2）荊芥連翹湯（17味 ｹｲｶﾞｲﾚﾝｷﾞｮｳﾄｳ）と柴胡清肝湯（15味 ｻｲｺｾｲｶﾝﾄｳ）は温清飲に皮疹治療に頻用される解表薬の柴胡（ｻｲｺ）や清熱解毒薬の連翹（ﾚﾝｷﾞｮｳ）などを加味した方剤です。漢方薬名の意味：柴胡清肝湯を参照してください。

　両方剤は共に尋常性乾癬に使用されますが荊芥連翹湯は､膿疱性乾癬のような化膿傾向の皮疹を伴う場合に適し､柴胡清肝湯は乾燥傾向の皮疹に適します。

4.3）防風通聖散（ﾎﾞｳﾌｳﾂｳｼｮｳｻﾝ）は､便秘傾向のメタボ肥満（脂質異常症､高血糖傾向）に用いられる大黄（ﾀﾞｲｵｳ）配合の清熱瀉下剤です。漢方薬名の意味：防風通聖散を参照してください。
　本方は荊芥連翹湯（17味）の11生薬を含みます（図４）。このことから尋常性乾癬の清熱剤にも用いられています。のぼせを伴う固太り傾向の人に適します。

５．桂枝茯苓丸とその関連の活血剤

5.1）桂枝茯苓丸は婦人更年期障碍だけでなく男女の慢性炎症疾患に頻用される活血剤です。皮膚科領域では清熱排膿薬の薏苡仁（ﾖｸｲﾆﾝ）を加味した桂枝茯苓丸加薏苡仁が用いられます。

　便秘傾向のメタボ肥満の尋常性乾癬患者には大黄を含む活血剤が適します。大黄には瀉下だけでなく清熱と活血の薬能もあります。

5.2）桃核承気湯（ﾄｳｶｸｼﾞｮｳｷﾄｳ）は桂枝茯苓丸に大黄を加えて清熱･活血の薬能を強化した方剤です（図５）。

5.3）通導散（ﾂｳﾄﾞｳｻﾝ）は大黄と理気薬を含む理気･活血瀉下剤です。便秘､のぼせ､胸苦しさを伴う尋常性乾癬に適します。

　日本の一貫堂医学では､尋常性乾癬に荊芥連翹湯と通導散を組み合わせた治療が行われています（活血効果を強化するために桂枝茯苓丸も併用されます）。