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病気の悩みを漢方で
ストレス胃
1.ストレス胃によるみぞおち(心窩部)の症状
ストレス胃(神経性胃炎)では、上腹部・みぞおち付近(心窩部)に違和感や痛みを感じます。上腹部(心窩部)の痛み(胃痛)に用いる主な処方は、柴胡桂枝湯(サイコケイシトウ)と安中散(アンチュウサン)です。
芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)を頓服で服用する場合もあります。
2.ストレス胃の痛みと柴胡桂枝湯
胃や腹が痛み、吐き気、食欲不振、肩こりを伴うストレス胃には柴胡桂枝湯が用いられます。
本方はイラスト(SKさん)のような
・神経質傾向の人に適する理気薬の柴胡(サイコ)と桂皮(ケイヒ)、
・上腹部痛や肩や首筋の筋肉の緊張を軽快する芍薬(シャクヤク)と甘草(カンゾウ)など
ストレス胃の症状を軽減する生薬で構成されています。(抗炎症作用のある黄芩を除く)
※気滞(キタイ)・気逆(キギャク)、痰飲(タンイン)、気虚(キキョ)は総論:4を参照
3.ストレス胃の胃痛に芍薬と甘草
ストレス胃の痛みは、胃の筋肉が緊張し血流が少ないという警告反応です。
また胃が痛むと心窩部や肩の筋肉が緊張し、こりや痛みを伴います。このような筋肉の緊張を弛緩させる作用のある生薬が芍薬(シャクヤク)です。
芍薬は腹痛や腹滿(腹部のガス膨満感)を改善する漢方薬で、甘草と組み合わせて用いられます。その代表的な処方が芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)です。
柴胡桂枝湯にはこの芍薬と甘草の組み合わせが含まれています。
4.ストレス胃の胃痛に安中散
ストレス胃の心窩部の痛みや腹痛に悩み、胃弱で(甘い物を好み)冷え症気味の人には安中散(アンチュウサン)が用いられます。処方名は「中(胴体の中央部、おなか)」 を安らかにする」という意味です。胃の停滞感、胸や上腹部の張り(気滞:キタイ)と 空腹時に痛み、ゲップを伴う時に適します。
安中散は西洋薬の芳香性健胃薬に相当します。配剤生薬の中に桂皮(ケイヒ:シナモン)、茴香(ウイキョウ:フェンネル)、縮砂(シュクシャ)、良姜(リョウキョウ)などの香辛料(スパイス・ハーブ)があります。これらは理気薬です。
本方の鎮痛効果には甘草に加えて延胡索(エンゴサク)が関与しています。
安中散(アンチュウサン)
安中散は市販の「漢方胃腸薬」の基本となる処方です。
- 〝ギリギリでキリキリ〟と宣伝されている「ストレージ・タイプI」は、安中散の製剤です。
- 〝ストレス胃〟というキャッチコピーで宣伝されている「太田漢方胃腸薬II」は安中散に茯苓(ブクリョウ)を加味した製剤です。
- 〝食べる前に飲む〟という言葉で有名な「大正漢方胃腸薬」は、安中散と芍薬甘草湯を組み合わせた製剤です。
- 〝ストレスがあるときの漢方胃腸薬〟として平成24年に市販された「大正漢方胃腸薬「爽和」は、安中散と四逆散(シギャクサン)を組み合わせた製剤です。
病気の悩みを漢方で
谿 忠人 先生
大阪大学薬学部卒・同大学院薬学研究科修了
- 大阪大学薬学部・助手 (生薬材料学と生薬化学)
- 近畿大学東洋医学研究所・講師・助教授 (臨床漢方薬学)
- 住友金属工業(株)未来技術研究所・医薬研究部長 (創薬研究)
- 富山大学和漢医薬学総合研究所・教授 (資源科学と漢方医療薬学)
- 大阪大谷大学薬学部・教授 (漢方医療薬学)
- 平成24(2012)年3月に大阪大谷大学を定年退職。
- 大阪大谷大学名誉教授。
- 日本東洋医学会名誉会員、和漢医薬学会名誉会員。
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