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病気の悩みを漢方で

症状と漢方薬

1.低気圧頭痛:気圧の変化で起きる頭痛

 雨天の続く梅雨、台風、秋雨前線の季節や、朝晩の気温差が大きい春や秋に頭が痛く重くなることがあります。
それが低気圧頭痛です。曇天雨天など気圧の変化が誘因となる頭痛です。天気頭痛とも称されます。学術用語の気象病天気痛に含まれる症状です。

 

 天気痛は頭痛や関節痛などの疼痛だけでなく、倦怠感、めまい、吐き気などの自律神経失調症状も含みます。気圧の変化を内耳が感じて頭痛や自律神経失調症状を誘発するようです(引用元:佐藤純)。天気痛を予報するアプリが提供されています。
 ここでは低気圧頭痛(天気頭痛)の漢方治療を考えます。

2.低気圧頭痛の漢方病理

 漢方には正氣(セイキ:生命維持活動)の失調した個体に外邪(ガイジャ:体外の発病誘因)が侵襲して発症する外感病(ガイカンビョウ)という考え方があります。
 低気圧頭痛は気圧の変化が外邪となり水滞(スイタイ)痰飲(タンイン)気虚(キキョ)血虚(ケッキョ:栄養不良)などの正氣の失調した人に発症します(図1)。

 古典の『傷寒論』には湿家(シッカ:水滞のある人)の症状として頭痛が例示されています。これを受けて「雨天時に発症悪化する頭痛は水滞が関係する」という口訣(クケツ:方剤運用に関する先達の経験談)があります。
 さらに天気痛の多くは「乗り物酔いしやすい人」に起きやすい、という疫学調査があります。乗り物酔いの背景には痰飲気虚があります。

 外邪の関与の大きな頭痛には、感冒に伴う頭痛があります。これも広義の天気頭痛に相当しますが、ここでは触れません。かぜ(1)を参照してください。
 なお、ストレスや血圧変動や生理前後の頭痛は、頭痛(5)片頭痛緊張性頭痛を参照してください。

3.五苓散(ゴレイサン:利水剤 リスイザイ)の関連方剤

(ゴレイサン)は、頭痛霍乱 (カクラン:吐き下し)、口渴むくみなど水滞症状に頻用される利水剤です。二日酔いのような症状(頭痛、吐き気、口渴、重だるい、尿量減少)を伴う時に適します。ノロウイルス下痢を参照してください。
 五苓散の適応となる頭痛は雨が降る前に増悪することが臨床的に明らかにされています(引用元:灰本元)。

(リョウケイジュツカントウ)は、頭痛動悸、発作性のぼせ立ちくらみなど水滞気逆(キギャク)症状に使用されます。
 本方は五苓散より吐き気、口渴が少なく、冷え症傾向で体力低下して午前中は不調で重だるく感じる人に適します。めまい(3)を参照してください。
 苓桂朮甘湯桂皮甘草の組み合わせ(薬対)が動悸の軽減に、五苓散白朮(ビャクジュツ)と沢瀉(タクシャ)が立ちくらみの軽減に寄与すると考えられています(図2)。

(トウキシャクヤクサン)は、(ケツ)を整える3生薬と、五苓散と共通する3種の利水薬を含みます(図3)。
   本方は血虚(ケッキョ)症状(冷え症、疲れやすい、顔色不良)と水滞症状(頭重、めまい、動悸、むくみ)に用いられます。冷え症(1)を参照してください。
 本方は生理前後の頭重に使用されますが、低気圧頭痛にも適します。

(ハンゲビャクジュツテンマトウ)は、六君子湯の関連方剤です。漢方薬名の意味:六君子湯で比較しています。
 本方は胃腸虚弱気虚)で吐き気痰飲)があり、冷え症疲れやすい人の頭痛、めまい立ちくらみに適します。雨天疲労冷えで悪化します。低血圧傾向で午前中は不調であることが投与目標になります。めまい(2)を参照してください。
(なお、本方のエキス製剤は銘柄によって配合生薬が異なります)

の比較

 低気圧頭痛に用いられる主な3方剤の使い分けの目安を図4に示しました。

4.低気圧頭痛:その他の方剤

 呉茱萸湯(ゴシュユトウ)は体力が低下した人の手足の冷え吐き気、心窩部つかえ、吃逆しゃっくり)肩こりを伴う激しい頭痛に用いられます。片頭痛を参照してください。頭痛は冷えや雨天、生理、寝不足、疲労で誘発されます。

 今回は低気圧頭痛に用いられている方剤を取り上げました。これら以外にも天候の変化が関与している頭痛に用いられる方剤があります。

・加味逍遙散(カミショウヨウサン:いらだちなどの多様な精神神経症状を伴う頭痛)
・香蘇散(コウソサン:神経過敏、吐き気、心窩部つかえ、抑うつ傾向の頭痛)
・川芎茶調散(センキュウチャチョウサン:鼻炎や月経周期に関連する頭痛)
・釣藤散(チョウトウサン:気むずかしい、めまい、のぼせ、高血圧傾向の早朝頭痛)

ちょっと一言:(トピックス)

頭痛の発症誘因を話してください

 頭痛の漢方治療では、以下のことが方剤選択のヒントになります。

1)随伴症状:冷え、のぼせ、抑うつ、いらだち、睡眠状態など。
2)発症誘因:感冒、高血圧、低血圧、ストレス、疲労、生理の前後など。

 ここでは気圧の変化が誘因になる低気圧頭痛を紹介しました。
 頭痛の漢方相談では上記1-2)に加えて、気候変動との関係も話してください。台風や低気圧の接近数日前から影響が出ることもあります。

(2022年3月31日 公開)

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