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病気の悩みを漢方で

漢方薬名の意味

消風散(ショウフウサン)

1.消風散(ショウフウサン)名の意味

 消風散の消風は、風証(フウショウ)を消す祛風(キョフウ)や解表(ゲヒョウ)に相当する薬能を意味しています。
 本方の適応となる風証は、風邪(フウジャ)湿邪(シツジャ)熱邪(ネツジャ)が連携して侵襲し急速に発症し拡散する痒みを伴う皮疹です。

 本方の消風には、図1の上段の4生薬と中段左の蒼朮(ソウジュツ)が寄与します。赤字は風熱邪を除去する清熱性の生薬です。

 荊芥と防風は、各種の皮膚病変に用いられる代表的な祛風薬です(図2)。

 荊芥には、炎症によるアクアポリン-3(AQP3)の発現の低下を抑制し炎症時の皮膚乾燥を緩和して痒みを止める作用があります(日薬理誌., 2014; 143: 115-119)。AQPは、水の流れを制御する細胞膜にあるたんぱく質です。

 蝉退(ゼンタイ)は、セミ幼虫の抜け殻です(図3)。約6-7匹で1gです。風熱邪を発散し痒みを止める生薬です。

 図1中段の3生薬は、湿潤皮疹を乾燥させる利水燥湿薬です。
 下段左の5生薬は、乾燥皮疹を潤す潤燥薬です。

 以上から、本方の名は、風証のかゆみ、熱感を伴う炎症性の皮膚病変に適することを示唆しています。

2.消風散の適応

 消風散の主な適応は、かゆみが強い水疱、びらん、結痂 (ケッカ)や蕁麻疹などの湿潤性・滲出性の皮疹です。結痂は、患部から出た滲出液が皮膚表面に固まった状態です。
 本方は、湿潤と乾燥皮疹の混在した湿疹皮膚炎に適しますが、臨床的には夏季に増悪し患部に熱のある湿潤傾向の皮疹に用いられています(皮膚, 1997; 39: 1-23)。

 消風散の皮膚科領域への研究例:

・成人型アトピー性皮膚炎の発赤を黄連解毒湯と併用して軽減、次いで皮膚乾燥を温清飲と併用して軽減。

日東医誌., 1994; 44: 391-395


・蕁麻疹の膨疹とかゆみを軽減。

MB Derma, 2013; No.211: 14-16


・42歳女性の膿痂疹と亀裂、鱗屑を伴う掌蹠膿庖症を標治として本方と
越婢加朮湯を、本治として防風通聖散と桂枝茯苓丸を併用して軽減。

日東医誌., 2021; 72: 171-176


・基礎研究: ダニ抗原反復塗布によって誘発したマウスアレルギー性皮膚炎
 の掻爬行動を抑制。

日薬理誌., 2008; 131: 240-243


 湿疹・皮膚炎(4)を参照してください。

 消風散の適応領域を拡大する併用例(皮膚, 1997; 39: 1-23)。

・水疱、びらん、浮腫、滲出の強い場合: 越婢加朮湯と併用。

・発赤、充血、熱感の強い場合: 黄連解毒湯や白虎加人参湯と併用。

・膿疱、化膿傾向の強い場合: 十味敗毒湯や排膿散及湯と併用。

・慢性化して暗赤色の乾燥皮疹: 温清飲と併用。

・肥厚、苔癬化の強い場合: 桂枝茯苓丸、桃核承気湯と併用。

3.消風散の関連方剤

(ジュウミハイドクトウ)は、消風散より乾燥傾向で熱証が軽度な初期の皮疹(紅斑、丘疹、膿疱)に適します(皮膚, 1990; 32: 149-150)。

 本方は、消風散より祛風解表薬と排膿薬が多く、清熱薬と潤燥薬が少ない方剤です(図4)。両方剤は、漢方薬名の意味:十味敗毒湯でも比較しています。

(ヂヅソウイッポウ)は、消風散より滲出液が多く化膿傾向の湿疹、結痂(ケッカ)に用いられます。とくに乳幼児の頭部・顔面の湿潤性湿疹(くさ:瘡カサ、胎毒)に適します(図5)。
 本方が、小児の頭部の紅斑、びらん、痂皮を軽減した報告があります(皮膚科の臨床, 2017; 59: 615-618)。

 本方は、祛風薬と清熱性の忍冬(ニンドウ:散癰)連翹(レンギョウ:清熱消瘡)大黄(ダイオウ:瀉下活血)を含む祛風・清熱解毒・活血化湿剤です。
 潤燥薬を含まないことが本方と消風散との相違点です(図6)。


(セイジョウボウフウトウ)は、のぼせ、赤ら顔、発赤した皮疹、赤にきびに用いられる清熱性の祛風排膿剤です。尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023の炎症性皮疹治療薬として推奨されています(日皮会誌., 2023; 133: 407-450)。漢方薬名の意味:清上防風湯を参照してください。

 本方は、祛風薬に加えて、清熱解毒剤の黄連解毒湯の主要生薬(図7●の3生薬)と連翹(清熱消瘡)を含みます。
 本方は、消風散より熱証の赤にきびに適します。にきびを参照してください。

ちょっと一言:(トピックス)

消風散の口訣(抜粋)

・祛風止痒、清熱と、利湿、滋潤薬を含む方剤。熱証の湿潤皮疹には黄連解毒湯を、乾燥皮疹には白虎加人参湯を併用する(広瀬滋之)。

・風熱型の湿疹・皮膚炎、蕁麻疹に用いる基本方剤。利湿薬と滋潤薬が同時に配合されている。夏季に増悪する湿潤傾向の皮疹によい(高橋邦明)。

・本方は、止痒、抗炎症、水分調整、血流改善作用を有する生薬を含み湿疹皮膚炎や蕁麻疹治療の基本方剤である(小林裕美)。

(2026年2月20日 改訂公開)


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谿 忠人 先生

大阪大学薬学部卒・同大学院薬学研究科修了

  • 大阪大学薬学部・助手 (生薬材料学と生薬化学)
  • 近畿大学東洋医学研究所・講師・助教授 (臨床漢方薬学)
  • 住友金属工業(株)未来技術研究所・医薬研究部長 (創薬研究)
  • 富山大学和漢医薬学総合研究所・教授 (資源科学と漢方医療薬学)
  • 大阪大谷大学薬学部・教授 (漢方医療薬学)
  • 平成24(2012)年3月に大阪大谷大学を定年退職。
  • 大阪大谷大学名誉教授。
  • 日本東洋医学会名誉会員、和漢医薬学会名誉会員。
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