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病気の悩みを漢方で
消風散(ショウフウサン)
1.消風散(ショウフウサン)の意味:風邪(フウジャ)を消散する
消風散の消(ショウ)は消す、少なくする意味です。風(フウ)は乾燥やかゆみを引き起こす漢方医学の外邪(ガイジャ:発病誘因)です。
そこで消風は体外から体表に侵襲した風の邪を消散する薬能のことです。消散は祛風(キョフウ)発散(ハッサン)解表(ゲヒョウ)に相当します。
なおこの風の邪(風邪 フウジャ)による悪寒発熱症状の一部が現代の感冒(風邪 カゼ)の語源になりました。
2.消風散の適応・・・かゆみ、熱感、湿潤と乾燥の皮疹
消風散の適応は風邪(フウジャ)湿邪と熱邪が関与する皮疹です。
かゆみが強く地肌が赤く熱感を伴う湿疹・皮膚炎に用いられます。夏に悪化することが多い湿潤皮疹に適します。
本方の適応は分泌物を伴う湿潤皮疹が主体ですが、乾燥皮疹も併存する病態にも適します。
3.消風散の配合生薬
消風散の配合生薬を図1に示しました。
消風散の原典には地黄は生地黄(新鮮な地黄?)と記載されています。図1の写真は日本薬局方規格の乾地黄(カンジオウ)です。
消風散の配合13生薬の薬能をまとめました(図2)。
本方は湿潤皮疹を乾かす利水燥湿薬と、乾燥皮疹を潤す補血滋潤薬を含み、多様な皮疹に対応できる内容になっています。
赤字は発赤や熱感を清熱する生薬です。
蝉退(ゼンタイ)はセミの幼虫の抜け殻です(図3)。風(フウ)と熱邪を発散し、水疱内の液を表面に出し尽くす透疹 (トウシン)という薬能で痒みを止める生薬だとされています。
4.消風散の関連方剤
4.1)十味敗毒湯(ジュウミハイドクトウ)は分泌物の少ない脂漏性湿疹や急性期のアレルギー性蕁麻疹、化膿し始めのにきびに適します。 にきびを参照してください。
十味敗毒湯と消風散の配合生薬を比較しました(図4)。
十味敗毒湯は解表薬の比率が高く消風散より初期の分泌物の少ない皮疹に適します。桔梗(キキョウ)などの排膿薬を含みます。
消風散は十味敗毒湯より熱感の強い分泌物のある皮疹と痂皮を伴う皮疹に適します。乾地黄などの滋潤薬と赤字の清熱性の生薬を多く含むことが両方剤の相違点です。
両方剤を併用して適応病態を広げる使い方もされています。
4.2)治頭瘡一方(ヂヅソウイッポウ)は分泌物が多く化膿、びらんや痂皮を伴う、乳幼児の急性湿疹に頻用されます。忍冬(ニンドウ)と連翹(レンギョウ)が清熱と排膿に寄与します(図5)。
治頭瘡一方は分泌物が顕著な頭部や顔面に発症する湿潤皮疹に用いられます。乾燥皮疹を潤す滋潤薬を含みません。
消風散は湿潤皮疹と乾燥皮疹の併存した慢性の湿疹・皮膚炎に適します。頭部や顔面だけでなく広範囲の皮疹にも使用されます。
消風散(ショウフウサン)の応用
消風散は皮疹の炎症や湿潤と乾燥の状態に応じて、
・急性期で水泡が多い場合には越婢加朮湯(エッピカジュツトウ)
・皮疹の発赤が顕著な場合には黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)
・化膿傾向があれば排膿散及湯(ハイノウサンキュウトウ)
・乾燥傾向の皮疹には十味敗毒湯や温清飲(ウンセイイン)
などと併用されます。
また皮疹が軽減すれば補中益気湯(ホチュウエッキトウ)のような全身病態を調整する方剤と併用されます。
(2021年2月2日 改訂公開)
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病気の悩みを漢方で
谿 忠人 先生
大阪大学薬学部卒・同大学院薬学研究科修了
- 大阪大学薬学部・助手 (生薬材料学と生薬化学)
- 近畿大学東洋医学研究所・講師・助教授 (臨床漢方薬学)
- 住友金属工業(株)未来技術研究所・医薬研究部長 (創薬研究)
- 富山大学和漢医薬学総合研究所・教授 (資源科学と漢方医療薬学)
- 大阪大谷大学薬学部・教授 (漢方医療薬学)
- 平成24(2012)年3月に大阪大谷大学を定年退職。
- 大阪大谷大学名誉教授。
- 日本東洋医学会名誉会員、和漢医薬学会名誉会員。
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