病気の悩みを漢方で

１．温経湯（ｳﾝｹｲﾄｳ）の意味…経絡を温める

　温経湯の温経（ｳﾝｹｲ）は経絡（ｹｲﾗｸ）を温めることです。この温は経験的に「ウン」と発音されています。

　経絡は生命活動エネルギーの気（ｷ）と栄養滋潤機能を担う赤い液体の血（ｹﾂ）の通路です。温経は経絡を温めて気血（ｷｹﾂ）の流れを調える薬能を意味します。

　なお温経湯は冷え症傾向の月経不順や不妊に用いられていますので「温めて月経を調える」方剤とも言えます。

２．温経湯の適応

　温経湯は婦人科領域では月経不順､月経痛､更年期障碍に用いられます。下腹部や足腰が冷えますが手足はほてり唇が乾く人に適します。

　本方は皮膚科領域では乾燥によるかゆみ､肌荒れ､主婦湿疹や血流の低下したしもやけ（凍瘡）に用いられています。

血の道症（２）を参照してください。

３．温経湯の配合生薬

　温経湯には12種類の生薬が配合されています（図２）。

　温経湯の配合生薬の薬能を図３にまとめました。

　図３上段の生薬が冷えを温め､２～３段の生薬が血（ｹﾂ）の流れを調え､下段の生薬が胃腸を調えて気（ｷ）の不足を補います。

４．温経湯の関連方剤

4.1）当帰芍薬散（ﾄｳｷｼｬｸﾔｸｻﾝ）と桂枝茯苓丸（ｹｲｼﾌﾞｸﾘｮｳｶﾞﾝ）は､温経湯と同じように婦人更年期障碍に用いられます。
　３方剤の配合生薬を比較しました（図４）。

　当帰芍薬散は､冷えとむくみを軽減する利水薬（ﾘｽｲﾔｸ：図４青枠内上段の３生薬）を含む点が温経湯と異なります。
　桂枝茯苓丸は､体力に余裕のある人の冷えのぼせ（のぼせ＞冷え）と血行障碍に適します。活血薬（ｶｯｹﾂﾔｸ）の桃仁（ﾄｳﾆﾝ）を含みます。
　温経湯は､冷えと乾燥病態と津液不足（ｼﾝｴｷﾌｿｸ）による口乾や手足のほてり（虚熱 ｷｮﾈﾂ）に適します。散寒薬（ｻﾝｶﾝﾔｸ）と生津薬（ｾｲｼﾝﾔｸ）に特徴があります。

4.2）当帰四逆加呉茱萸生姜湯（ﾄｳｷｼｷﾞｬｸｶｺﾞｼｭﾕｼｮｳｷｮｳﾄｳ）は冷えと痛む病態を改善する方剤です。四肢末端の顕著な冷えと頭痛､腹痛､腰痛に用いられます。
　本方と温経湯との比較は､しもやけ（凍瘡）の漢方を参照してください。

4.3）四物湯（ｼﾓﾂﾄｳ）や当帰飲子（ﾄｳｷｲﾝｼ）も冷えと乾いた病態に適します。これら本方との比較は主婦湿疹の漢方を参照してください。