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病気の悩みを漢方で

漢方薬名の意味

(11)滋陰降火湯(ジインコウカトウ)

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1.滋陰降火湯 (ジインコウカトウ)・・・液を養してろす(冷ます)

 滋陰降火湯滋陰(ジイン)は陰液(インエキ)の不足(陰虚 インキョ)を滋養する(潤し補う)薬能です。補血生津(セイシン)を併せ持つ薬能に相当します。
 降火(コウカ)は陰液不足による(熱症状:虚熱 キョネツ)を降ろす(さます)薬能です。

 滋陰降火湯陰液不足による乾性咳嗽を潤して軽減する方剤です。

2.陰虚虚熱

 漢方医学では、健常状態は陰液陽気(ヨウキ:)の量と機能が調和して維持されると考えています(図1の上)。
 陰液が不足した陰虚病態では、陽気が相対的に強くなるため虚熱症状が発現します。虚熱は口の乾燥、手のひらや足裏のほてりなどです。この熱症状を調整する薬能が滋陰降火です(図1の下)。

 図1陰虚陰液の不足病態を意味する中医学の言葉です。この「病気の悩みを漢方で」では陰虚津液不足と表示しています。日本漢方の陰虚陰証寒証で体力の虚証病態)との混乱を避ける配慮です。気血水を参照してください。

3.滋陰降火湯の適応

 滋陰降火湯の適応は、体力の低下した人の少量粘稠痰を伴う長引く乾性咳嗽です。夕方や夜間に出る咳嗽が特徴です。

 本方は口腔咽喉皮膚の乾燥、便秘傾向などの乾燥病態と、夕方の微熱寝汗掌や足裏のほてりなどの不快な熱症状(虚熱)を伴います。六味丸(ロクミガン)と併用されます。

 現代の用法は、本方の原典にある「虚労、・・・陰虚火動、発熱咳嗽、吐痰喘息、盗汗口乾」に準じています。

4.滋陰降火湯の主な配合生薬

 滋陰降火湯滋陰に関係する生薬は乾地黄(カンジオウ 補血生津)と生津潤肺薬(セイシンジュンパイヤク)の麦門冬(バクモンドウ)と天門冬(テンモンドウ)です(図2)。
なお補血薬当帰(トウキ)にも喘咳を軽減する欬逆上気の薬能があります。
 さらに滋陰しながら降火する清虚熱薬(セイキョネツヤク)の知母(チモ 清熱潤燥)も配合されています。

5.滋陰降火湯の関連方剤

(ジインシホウトウ)は、滋陰降火湯と同様に体力の低下した虚労状態の人の乾燥病態と虚熱を伴う乾性咳嗽に用いられます。原典には「虚労を補い、咽喉を潤し、喘咳を止める」適応症状が例示されています。

 滋陰至宝湯は、抑うついらだちなど気滞(キタイ)症状を軽減する柴胡(サイコ)と香附子(コウブシ)を含みます(図3)。本方は補血理気剤逍遙散(ショウヨウサン)の関連方剤です。これが滋陰降火湯との相違点です。

(セイハトウ)は、滋陰降火湯より炎症の程度が顕著な着色した多量の粘稠痰を伴う湿性咳嗽に用いられます。のどの痛みを伴うこともあります。

 本方は生津潤肺薬麦門冬天門冬に加えて桑白皮(ソウハクヒ 瀉肺平喘貝母(バイモ 清熱化痰竹筎(チクジョ 清熱化痰)など咳嗽治療に用いられる清熱性の生薬を含みます。清肺湯を参照してください。

(バクモンドウトウ)は少量痰を伴う乾性咳嗽に用いられる基本方剤です。
 主薬の麦門冬に加えて人参粳米(コウベイ)が潤肺に寄与します(図5)。
 本方は、かぜ症候群後の空咳、咳き込み咽喉乾燥感に頻用されます。
 なお原典には「日三夜一服」とあり、夜に服用する指示があります。夜間の咳き込みに対応するためと考えられます。

 滋陰降火湯は本方より慢性期の乾燥病態に適します。本方と清肺湯の比較はかぜ(3)を参照してください。

ちょっと一言:(トピックス)
 

滋陰降火湯の応用

 

 滋陰降火湯は、切れにくい少量の喀痰を伴う乾性咳嗽に用いられます。身体の乾燥傾向が顕著で、口やのどが乾き、また寝汗やほてり感を伴います。
 便秘傾向のある場合に適し(下痢状態には適しません)。

 本方は胃もたれを起こす乾地黄(カンジオウ)を含みます。服用後に食欲不振や胃もたれが起きた時には滋陰至宝湯麦門冬湯に変方するとよいでしょう。

 

(2022年5月30日 改訂公開)


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